Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Outskirts of Bern
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
15 August 3151
「降下ポイントまであと10分です。」
パイロットの報告に、アリマは静かに腰を上げた。
背後ではボルド達が、無言のうちに降下準備を整え始めていた。
アリマは重輸送ヘリの前方、操縦席に向かう。
「協力させちゃって、悪いわね。」
シートの後ろからパイロットに声をかけた。
ツェレン達の救出作戦を展開する時に最大の問題となったのがバトルアーマー隊を含む救出部隊の輸送手段とそのパイロットだった。
先行している軽メックに追いついて、歩兵を展開するためには空の輸送手段が必要だった。
しかし、基地にあった双発の重輸送ヘリを操作できる人間はドルジの部隊にはバヤルしかいない。プリヤンカはこれを失念していた。
バヤルにはArrowⅣの操作という重責がある。適切な弾種を適切な場所に送りこむには彼の知識が必須だった。
思わぬ落とし穴に誰もが言葉を失った。そのとき、静かに手枷のついた両手が上がった。
以前、プリヤンカと共にアンネを戦場に運んだ軍閥の救助ヘリのパイロットだった。
「どうせ、もう軍人は辞める気でした。」
いつ辞めようかと悩んでいた時に、プリヤンカの心変わりを目の前にして、ようやく心が決まったのだと言う。
彼には軍閥への所属に拘る意思もなければ、忠節もなかった。
アリマたちに協力する理由を問われても、「なんとなく」以上の答えはない。
アリマとプリヤンカは首を振って彼の協力を拒んだ。そんな不確定要素にツェレンの命を預けるわけにいかなかった。
だが、ふいに彼の両手の拘束は解かれる。
ドルジの右手に握られていた片手斧の一閃は手枷を繋いでいた鎖を一撃で砕いた。
パイロットの手を取って口にしたドルジの「頼んだ」という言葉は、アリマの耳にも聞こえている。
その一言で、全てが決まった。
「降下ポイントまであと5分。庫内の減圧後、後部ハッチを開きます。」
パイロットは通信機越しにバトルアーマー隊に通達する。
操縦桿を操作して、高度を下げ始めた。
「左下、背の低い3階建てのビルの脇にFleaがいるのが見えますか?あそこがアリマさんの目標です。」
彼の指差す先には、確かにFleaの機影があった。
アレフが先に到着している。
アリマとアレフは地上で合流して、ツェレン達が捕らわれている倉庫に裏手から接近する算段だ。
重厚な装甲服を纏うボルド達とは降下のタイミングで二手に分かれる。
「ご武運を。」
減圧が始まる前に後部に戻ろうとするアリマの背中に声がかかった。
「帰りも頼むわよ。」
アリマは振り返って、彼にそう答えると扉をくぐって操縦室を出る。
自前の銃を使える実戦は久々だった。