Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ammo Dump Control Tower
Zhongshan System, Zuhai
Jade Falcon
25 December 3150
TimberWolfから降りてきた男はドルジと名乗った。
パイロットスーツにブラッドネーム持ちのパイロットにしか付かない装飾が目に付いたので照会をしてみるとすぐに彼の正体が返ってくる。
識別番号からも彼が誰かの成り代わりではなく本人であることが照合された。
この氏族の将官の血統たる、ヘイゼンの血名は誰でも知っている。
つまり、彼は「職位の審判」を通過した氏族の中でも選り抜きのエリートメック戦士だ。
デルタ銀河隊の第53タロンといえば、つい最近の戦闘でほぼ壊滅したはずだ。
その生き残りというだけでも異例だが、それが他部隊のインフラ破壊作戦に駆り出されている。
任務先は、何年も前に放棄された旧施設。破壊命令が出されたのが不自然なほど、既に価値のない場所だ。
このメック戦士とTimberWolfが赴くような場所ではない。
違和感を覚えたコボルは、この戦士の過去を洗ってみる。
20年分の戦歴に、こめかみを押さえた。
いくつもの戦場と部隊を渡り歩いて、各地で暴れ回っていたようだ。
彼が襲撃した施設に巣食っていた狼藉者はさぞ驚いたろう。
地獄を見てから死んだはずだ。
そんな戦士がここにいる理由もすぐに分かった。
彼の機体を確認した整備が「意図的に通信不能にした形跡」を見つける。
デルタは彼を意図的に置き去りにしたのだ。
コボルは自分が氏族の戦士階級の人間ではないことを意図的に隠すことにした。
この基地の仕切り役をしていることだけを伝えて、ドルジから色々な話を聞き出す。
「この基地の戦士様たちのお手伝いをさせていただいてる。」
粗方、彼の話を聞き終えた後にコボルは自ら名乗り右手を差し出したが、返事は返ってこない。
階位を隠して騙し討ちをしたのはコボルなのだから、その反応は当然とも言える。
基地内ではすでにこのメック戦士のことは噂になっていた。
それはそうだろう、滑走路傍の駐機場のTimberWolfはそのままだ。
彼の望んだ補給については、まだ手をつけていない。
少なくとも機体は整備も補給も必要な状態だ。
このTimberWolfとパイロットはただの拾い物ではない。
寡黙な戦士はコボルからしてみれば、威を借るための虎のようなものだった。
金のなる木と言ってもいい。
──逃してはならない。
この基地はもはや、兵器も戦士も、数えるほどしか残っていなかった。
補給も支援も絶たれた今、この基地が為せることなどないに等しい。
だが、そこに意図的に切り捨てられたメックと戦士が一組、ふいに現れた。
もちろん、虎はキツネの言葉では動かない。
だが...。
「戦士様には一つこの基地のお手伝いをお願いしたい。」
答えはない。
TimberWolfの影が冬の朝日の光を受けて長く伸びていた。
基地全体が間もなく目覚める。
──いくらでも待とう。この男をこの基地に繋ぎ止めるためなら、いくらでも。
言葉を慎重に選びながら、付け加える。
「……必要なものは俺が用意する。」
コボルはドルジが次の動きを見せるまで、その後、何も言わずに待った。