Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship Bay
Krievci System,Nadir
Jade Falcon
11 September 3151
「オ〜ケ〜?やっぱ、揺れ方おかしいよ?」
間延びした声が頭の上から格納庫に鳴り響く。
KitFoxの移動次いでに起動テストをやったところ、エンジンの出力にケチが付いた。
「ある程度は慣れてもらうしかねーんだけど、そんな違うかなぁ?」
「こうさ、お尻を伝って来る感じが、なんかいつもはもっとジンジン来るはずなのに、弱いの。元気がないみたい。」
他の整備士に任せられない理由がこれよ。
パイロットのトヤーの説明は感覚的過ぎて、違和感の原因の特定には翻訳が必要だった。
普段から、彼女の話を聞いているオーケでなければ、怒り狂うか、戸惑い頭を抱えるだろう。
ーー歩いてすらいないんだから、核融合炉の出力の問題かなぁ。
専門家に聞かないとわからないような問題ならば、ただの整備士では対処ができない。
プリヤンカ女史の出番だろうか?
しかし、そもそも数値に変化がないんじゃ相談のしかたが分からなかった。
こんなよく分からない話を持ってきた相手がオッサンやゴリラ女なら、怒鳴り散らして喧嘩しておしまいだが、この部隊ではそうもいかない。
なんせ、まず美女が多い。技術に明るい戦士が多く、変更の指示は具体的で提案するのは整備側だ。迷いや悩みの相談は女性陣に多い。そして、美女が多い。
トヤーは最初に出会った頃は目立たない恰好で、コソコソと隠れているだけの少女だった。
彼女の大人への不信が融けるたびに、本性が露わになり、今じゃ、ツェレンと並んでも見劣りしない。優劣が起こるとすれば、それは見る側の問題だ。
それが眉をハの字にして、指を咥えて上目遣いで縋ってきたら......。
ーーボクには、断れないッ!
例え、もうその娘には既に相手が居ようとも、湧き上がるこの気持ちは抑えられない。
ーーおじちゃんに任せておきなさいっ。
己の心に湧き上がる雑念、否、正直な気持ちを頭の中で文字にする。
すると、頭の中に一つの可能性が閃く。
変わったのは彼女の方かもしれない。
「トヤーさん。最近、お尻とか育ちましたか?」
『やっぱ分かる?どっちも大きくなっちゃってさ。』
急に返事が通信機に切り替わる。
『絶対、ゾリグのせいなのにアイツ絶対認めないんだよ?』
ーーそりゃ、毎晩やってれば大きくもなるよね。
トヤーの最近の悩みの相談は専ら、彼氏の無尽蔵の体力と自分の体力トレーニングについてで、あとは惚気だ。整備の話はない。
久々に真っ当な話かと思えば、まさかの結論だ。
ーーお尻が下着に収まらないって、確かに言ってたな。
服のサイズの問題はなんとなく気が付いてはいたけれど、そっちにも影響するとは。
「たぶん、感触が変わったのはそのせいじゃないかな。」
『え〜、じゃあ、変わったのはあたしの方か。』
はい、おキレイになりましたとも。笑顔も増えて、先日怖い目に遭ったのがウソのよう。
班員の集中が乱れるから、そろそろ格納庫にホットパンツで来るのやめて欲しいな。
「じゃあ、問題が解決したのなら機体を移動しようか。水平器のバランスチェックも兼ねてるから、ゆっくりとね。」
オーケの指示でKitFoxの脚部が動き始める。
安定ヨシ。さて、次はなんて言われるかな?手が掛かるって楽しいね。
オーケの口元が弛んだ。