Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Over Gostivar
Krievci System,Gostivar
Jade Falcon
16 October 3151
作戦決行の2日前にドルマ―達は飛行訓練と称して、全員が召集された。
訓練という言葉に違和感を感じさせる事前説明の少なさと格納庫での整備班の緊迫感。
機体の本来の用途に関係なく、全ての機体が爆装をしている。
コクピットに収まったパイロット全員が、予定を超える機体の重量に状況の異常を察した。
だが、ドルマー達が抗議の声が上げる前に整備班長が口元に指を当ててそれを止める。
「説明は空でプリヤンカさんから、聞いてくれ。これはアリマの計画の通りなんだ。」
オーケの言葉を信じて、ドルマー達は空に上がり、通信チャンネル開いて待った。
アリマが用意した爆弾の数は「20」発だった。
重量が想定より重いのは、それぞれの機体が1つずつ多く火種を抱えているからだ。
今回の作戦目標は、船舶を除けば残りは広い面。16発と20発では有効な投弾地点が変わる。
プリヤンカが告げた内容はパイロット達の想像の通りだった。
『今回の飛行任務は訓練ではありません。先日アリマさんから説明のあったリンツ港急襲作戦をこれより開始します。』
もう、気が付いているでしょう。と言わんばかりの口調が無線の向こうから聞こえる。
ドルマ―はその前置きも言い訳も色々と省かれた説明に、アリマの影を感じた。
重爆装のVisigoth4機はこのまま弾道飛行に移り、そのままリンツ上空に突入。
港に立ち並ぶ構造物をできる限り焼き払って撤収、そのまま基地に帰投する。
HUD脇のサブモニターにリンツ港の地形図が表示される。その上に各機の進路と投弾ポイントが赤くマークされた。
各爆弾は投弾後、地上に設置されたマーカーに誘導される。
淡々と告げられる作戦に、誰も抗議の声を上げない。
作戦の説明が終わっても、誰も質問しなかった。
「全機続け。」
ペダルの操作に反応して2番機の機首がグッと上を向けて、一気に高度を上げていく。
ドルマ―の指示を受けて、他の機体も後に続いた。
もう、地上からの指示はない。
『ドルマー、この件はどのくらい知っていた?』
空の色が青から藍に変わり、暗くなったからゾリグがドルマ―に声をかけた。
何かが気に入らなさそうな声。
彼はドルマ―と違って、今回の作戦の進行に納得していないわけではない。
だが、飛行隊への情報開示のなさについてはドルマ―にも思うところがあった。
「何も。ここ最近アリマを見ないな。って思っていたくらい。」
気が付いたときには彼女は居なくなっていた。
──アリマが海を渡った方法……。
ゾリグがそれを知らないのならば、この作戦の真の姿を知っている人間はこの世にドルジと潜入した本人しか知りえない。
『ツェレン......も知るわけがないか。』
ドルジとの役割分担で、ツェレンは情報戦からは距離を置いている。
破壊や潜伏の工作については副官の彼女にも知らされていないことが多い。
事務処理や対外折衝の窓口で彼女は手一杯だった。
ナランは定期的な哨戒任務や偵察飛行を除けば、ドルジの指示でアンネの身辺の警護をしている。
アリマがどうやって、海を越えたのかは謎だ。
だが、海を越えた先。リンツ港にマーカーを設置したのは彼女しかありえない。
『そろそろ、無線を封鎖するわよ。』
続きは帰りにね。という副長の声がそれぞれの思考を止めた。
音速をはるかに越えている4機が、高度と速度を下げ始める。
作戦中止の指示はない。武装のロックは既に外れている。
キャノピーの向こうでは空の藍がどんどん明るくなり始めていた。