※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.14_04

Badland

Krievci System,Gostivar

Jade Falcon

24 October 3151

 

「バヤルさんはボルドが回収しました。オートローテで着陸出来たみたいで、機体も本人もほとんど無事です。」

「社畜のサンダーボルトからのデータリンク来ました。TimberWolfに送信します。」

 

 通信員達は多忙を極めていた。

 手出しするのは彼らの邪魔にしかならないと判断して、エージェント・ファーベは彼らの後ろを離れる。

 

 予想はしていたが、移動HQのトレーラーの中でも連絡員にできる仕事は何も無い。

 指揮車の外にも同じ機能を持つテーブルが展開されていたが、車内にいる方がやりとりされている情報を生で拾えた。

 

 薄暗い車内の中央では見習い士官の少女が大量の情報と格闘している。

 戦術コンピューターの提案は時々採用されるようだが、大半は却下された。

 空で大地で個々のパイロット達がそれぞれの判断で技術の限りを尽くしている。

 

 彼は未だ指揮官のドルジどころか、部隊の副官のツェレンにすら会えないままにこの戦場に足を運んでいた。

 先に部隊に接触したエミリーヤも「勘のいい、若い賢しい女児3人」に散々におちょくられ、LICからの要求を伝えることすら叶わなかった、という。

 ファーベも作戦開始前から、今この時まで一切意見を請われることも発言を許されることもなかった。

 

 中途半端な場所に立っていれば、「邪魔よ、どいて。」と邪険にされるので、ファーベは自然と部屋の端か隅に追いやられる。

 立場の違いを見せつけるべきか?と考えもしたが、本能がそれを拒絶した。

 この少女が遺伝子調整を受けた戦士なのであれば、身体能力は彼よりも遥かに上であるはずだ。

 

 ホロテーブルと戦術コンピューターを一人で占有する少女、アリマの目の動きと言葉を追うと彼女の持つ情報量に驚く。

 戦術コンピューターが提供していない情報が彼女の口からするすると出ては、戦場のパイロットに提供される。

 一瞬、彼女の服装や外見を偽装ではないかと疑ったが、他のあらゆる情報がそれを否定した。

 もしも、ファーベの勘が正しいのだとしたら、彼女は味方の前でも常に偽装していることになる。

 仮定を肯定するためには他の全てを否定しなければならないほど、滑稽な思いつきだった。

 

「アレフ、タイミングの指示お願い!」

「目標はカロリンジャンのGrasshopper、ジャンプの着地の瞬間を狙いますからね。」

 通信席に座る男がアリマの声に応える。

 谷間が一直線に伸びる箇所を抜いて、ミサイルを直射しようというらしい。

 

──そんな、曲芸のような攻撃が成功するものか。

 

 心の中でファーべは彼らの思い付きを嗤う。

 テーブルの上で青白く光るホログラムの地形図。その一点に目を走らせた。

 確かに真っ直ぐな一本の割れ目のような谷間がある。TimberWolfが割れ目の端に向かい、社畜兵団のWolverineを追う深緑色のGrasshopperが反対側の端に向かっている。

 理屈上はできるだろう。

 だが、そんな攻撃は「現実的ではない」。

 

 ファーべの否定を無視して、ホロマップの状況は順調に進んでいく。

 地形図上のTimberWolfが配置についた。

「タイミング......3、2、1...今っ!」

 アレフの合図に合わせて、TimberWolfの両肩の発射機が一斉に火を吹く。

 地図の上のTimberWolfからミサイルを示す赤い線が延び進む。

 

──そんな馬鹿なことがあってたまるか。

 

 渓谷の先、少し膨らんだ起伏の上、彼らが望んだ場所にGrassHopperが着地した。

 そこに向けて、渓谷の中央をミサイルの軌道は真っ直ぐに進んでいく。

 寸分違わずに、まるで定規でも使ったかのように。

 

──行けっ、もうすぐだ。

 

 ファーベは心の内で意味のない応援をミサイルに送った。

 TimberWolfのArtemisVから送られてくるミサイルの管制情報を食い入るように見つめる。

「当たれ......」

 祈るようなアリマの呟きが聞こえて、彼女も自分と同じ数字を見つめていることに気がつく。

 

 ホロマップの上に描かれた赤い線の先がGrasshopperを示す三角形に届いた。

「命中です。」

 通信席のアレフが振り向いて、アリマに弾着の報告する。

 アリマは彼を振り返りもせずに頭の上で拳を振って返事をした。

 

 歓声の一つもなく、それぞれが次の自分の仕事に戻っていく。

 アリマの興味はすでにGrasshopperにはないように見えた。

 彼女の目は山の起伏を越えて跳んできた白いPhoenixHawkの動きに集中している。

「クォーツ1が誘いにのったわ。」

 ローリングストーンの隊長機だったか......。

 ファーベはアリマの次の言葉を待つ。

 

 だが、彼女の次の言葉は彼の想像を越えていた。

「ドルジ、カロリンジャンを再起不能にするわよ。走って。」

 彼女の言葉を受けてか、TimberWolfが足を速めて駆け始める。

 

 後退する社畜兵団のWolverineを追って、深緑のGrassHopperは盆地のような平たくなった土地に飛び込んでいた。

 ホロマップの上を改めて見ると、その機体の周りは3機のメックに囲まれている。

 

 TimberWolfの過熱でホロマップテーブルからの警告音が車内に響く。

 これが鳴るのは今日で2度目だ。

 

 ファーベは手元のパッドからエミリーヤに短くメッセージを送る。

「アリマという戦士見習いについて調べてほしい。」

 目の前の現実を信じるのなら、LICが抱える過去の氏族へのイメージは全て捨て去る必要があった。

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