Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Fort Chastre
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
4 November 3151
エージェントと呼ばれる人間は、銀幕の上では常に身を隠して人の目から隠れて生きているように描かれる。
だが、現実はそうでもない。
交通法規スレスレの速度で目的地の玄関先にタイヤ跡を付けて急停車、荒い靴音を立てながら憤怒の表情を隠すこともなく戸を蹴破らん勢いで建物に入ってきて、大声で人の名前を叫ぶ。
そんなエージェントも世の中にはいる。
「アリマさぁぁぁん?先の戦闘はどういうことかお伺いできます?」
名目上、ドルジの部隊はクリエフチの執政官の支援で活動しているが、資金や物資面ではLICが提供している。
色々あるだろうから。ということで、エージェント・エミリーヤはこの建物に顔パスで入れるようになっていた。
検問でも遮られずに、エントランスでも警備に止められない。
今度はなにが起こったのだろうか?と衛兵に奇異の目を向けられる彼女だが、そんな目を意にも介さず、彼女は真っすぐにアリマの元にやってきた。
LICの連絡役であるはずのファーベは声掛けすらされていない。
別件でファーベと話しこんでいたアリマは騒々しい来客にイヤそうな表情を向けた。
「アリマさん、顔。顔。」
あまりの露骨な表情にアリマの背後に控えていたプリヤンカが小声で注意をする。
「社畜兵団を盾にして、ご自分の部隊の被害を抑えたそうね!?」
エミリーヤの言葉を受けたアリマの顔がぐるんとファーベの方を向いた。
何かを言いたそうな眼差しを浴びせてくる。
確かにファーベはエミリーヤの情報源ではあるが、
──そんな報告はしていない。
細かく首を振って彼は自分の関与を否定する。
TimberWolfの機動力、パイロットの機転によってドルジの部隊は被害を抑えた。同じことをできなかった社畜兵団のメックは内部機構まで破損して、重整備を必要としている。
被害は少なかったが、最序盤の砲撃戦はTimberWolfが正面に立っていた。
流石に社畜兵団を盾にした。というのは言いがかりだ。
「ウチも内情が厳しくてね、物資には限りがありますの。あなた達の部隊に供給する資材の量は損耗に応じて減らさせて頂戴。」
エージェント・エミリーヤは勢いのまま、一方的に彼女の要求を捲し立てる。
ファーベはより厳しくなったアリマの視線に耐えた。
この女上司が到着する直前に、アリマ達に供給する補給資材の輸送経路の一本化の通達をしていた。
これからは全ての物資がブルーマーチンを経由してから彼らの手に渡る。
この変更によって、ドルジの部隊に渡る物資の量が不当に減らないようにする。とファーベは、アリマを宥めている最中だった。
早くもこの約束は反故になったことになる。
──アリマが説得を受け入れる前だったのが、せめてもの救いか。
ファーベは考え方を切り替えた。
アリマ達からのエージェント・エミリーヤへの心証は間違いなく悪化しただろう。
だが、この後供給資材の物量を過剰に減らさなければ、アリマ達から彼への心証の悪化は最低限に防げる。
エージェント・エミリーヤの企みは後日に訊くとして、ファーベは一先ず目の前で猛る猫たちの争いを止めることにした。