Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Zhongshan System,Zuhai
Jade Falcon
10 January 3151
傭兵たちは地面の泥濘に足を取られていた。
泥濘は腹立たしいが、現地の百姓を蹴散らすだけで高給を食むことのできる契約を取ることができたのだ。
自由な裁量権もなく、配置トラブルに無意味な査察もあるが、それでも魅力のある報酬額だった。
悪天候が空けて、ようやく憤りの種が一つ晴れたところで、大型の車両が接近していると連絡が入った。
大型とは言え車両とメックでは勝敗は明らかだ。
念のために、火器管制システムを立ち上げた傭兵たちの前にぬっと汚れた翡翠色の機体が姿を見せた。
傭兵たちは両の膝にマーキングされた鷹のマークに戸惑いを覚える。雇い主に相対するために百姓側も傭兵を雇った噂は聞いている。だが、目の前のTimberWolfからは、金で動く自分たちとはまるで違う何かがにじみ出ていた。
ジワっと傭兵たちの股の間を冷たいものが走る。
そんな彼らをあざ笑うように、TimberWolfのレーザー砲の砲口が、ためらいもなく光った。
TimberWolfが颯爽と戦線を押し上げて進んだ。
丘陵を盾にジワジワと相手に損失を与えるという、作戦は早速吹き飛んだ。基地からの状況を確認する通信が指揮車担当のオチルを呼び出している。しかし、肝心のオチルは応答のしようがなかった。
TimberWolfが避けて前進した丘陵の反対側斜面を敵のWolverineは迂回して突撃してきた。運悪く、そこに頭を突っ込んでしまったオチルの指揮車両は通信機の送信装置を破壊されてしまったのだ。
TimberWolfにデサントしていたボルド隊はまだ所定の配置に到着していなかった。もし、彼らがすでに配置に付いていて相手が見えていれば、異なる結果になったに違いない。
オチルは1人ヘッドセットを見つめた。
あの時、オチルのメガネが曇ってなければ、地図の現在位置を見間違えなければ、指揮車両がTimberWolfよりも先に相手の索敵に引っかかることもなかった。
作戦が吹き飛んだのはTimberWolfのせいではない。
敵の布陣の後方に潜んでいるThunderBoltと戦車の粒子砲に背面の装甲を灼かれたTimberWolfが指揮車両の側を通り過ぎた。
丘陵を盾にTimberWolfの両肩から長射程ミサイルが間断なく連続発射される。弾道が高い。相手を直接照準していない、間接射撃モードだ。ボルド隊による着弾誘導が始まったのだ。
何発のミサイルかがWolverineを直撃して、Wolverineが転倒する。至近距離まで迫ったTimberWolfの全弾発射をモロに受けたのだ。吹き飛ばなかっただけ幸運というものだろう。
今回の作戦の本来のフォーメーションが整った。
しかし、そこにオチルはいない。指揮車両の射撃誘導がすっぽりと抜けている。その欠落をカバーすべく、部隊は全体的に予定よりも前に出ていた。
すでにTimberWolfは序盤の突出の際に負ったダメージが大きく、背面の装甲は灼け落ちて内部構造が露出していた。帰ったら重整備しなければならないだろう。
それでもTimberWolfが再度前進する。機体各部の焼けた放熱板がまだ赤みを帯びていた。
その損傷でなお撤退しないのは、オチルがまだ戦場に残っているからだろうか?Wolverineの一斉射撃を受けて継戦不能になったボルド隊が退いていくのが見えた。
オチルが知らないうちに状況は撤退戦に移行していた。ドルジがその殿を務めている。全身の損傷にも関わらず、TimberWolfにはまだ獲物を狙う猛禽類のような凄みがあった。
オチルは戦域を離れるために走り出した。何マイルか先に行けば、回収地点だ。背後のTimberWolfの砲撃音はしっかりとオチルの後を追ってくる。
今日の失敗を忘れないために、今日は生き残ろう。それが、せめてもの償いだった。