Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ep.15_01
Fort Chastre
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
18 November 3151
肌の色、血統、性別、生まれ。
この世に同じ人間が2人生まれることはない。
同じ遺伝子を持ったとて、それは別の人間なのだ。
タニスとその隣に並ぶ、褐色の眼鏡の娘が違う人間であるように。
ドルジの司令室として使われている、基地の一室の扉の前に彼とプリヤンカは同時に辿り着いた。
彼女が先にタニスを部屋に入れたのも、発言の順を彼に譲ったのも、彼がトゥルーボーンだからでも年上だからでもないだろう。
この中心領域の娘はソラーマという彼の身分を知らないのだ。
彼をタニス様と呼ぶ、黄色いツナギの整備員の女子達と同様に、この部隊は老兵達を戦士として扱う。氏族に捨てられたタニスもドルジの下では戦士でいられた。
例え、この扱いが老人を酷使するための作為だとしても、それはそれで心地がいい。
ふとした興味から、タニスはドルジへの報告を終えた後も立ち去ずにいる。
本来であれば、海辺の工事の進捗を報告すれば彼の役目は終わりだ。
だが、タニスはこの娘が何を長に報告する気なのか聞いてみたいと思った。
今日まで、ソラーマの2人はこの部隊の女達に散々に働かされている。
ドルジの作戦という名目があるからこそ、老兵達は従っていた。
だが、タニスもマラートも実際に作戦を提案をしているのが、彼の下で動き回る2人の若い娘達であることを知っている。
次は何を企んでいるのか、自分たちを動かしているのはどんな策なのか、少しでも知りたいと思った。
ちらっと視線を部屋の脇のソファに移す。
マラートを癇癪させた子猫の片方が、今はその上で寝息を立てている。
彼女は今は見習い戦士の格好をしていない。
いや、むしろ今の姿こそがアリマという少女の本来の姿なのだろう。
床に散らされた着衣の上に横たわる彼女の肢体は少女と言うにはよく熟れていた。
ほんのりと赤みを帯びた柔らかそうな丸みの体付きは若さだけでは説明が付かない。
部屋に満ちた男女の匂いとまだ乾ききらない粘液の放つ光沢が、女の体を彩っている。
外見すらも謀られていたのだとすれば、最早タニスはアリマの何もかもを信じることはできなかった。
だが、プリヤンカの言葉は身構えていたタニスの度肝を抜いた。
「ツェレンママと私のお腹に子供が居ます。」
誰との子供か?などと聞く方がどうかしている。
目の前にいる、ドルジの子以外にあり得ない。
いつだ?と問うドルジにプリヤンカははっきりと答える。
「私は4ヶ月、ママは5ヶ月目です。」
愛おしそうに腹に手を添える女に何と声をかければ良いのか、タニスはわからない。
代わりに思いつくままの言葉をドルジにかける。
「おめでとう御座います。」
違和感はあったが、頭の中に浮かんだ言葉の中ではこれが一番マトモだった。ここにいるのがマラートだったならば、別の言葉が思い付いたのだろう。
「ママはしばらくの間、戦場には出れません。私は明日の作戦もお伴します。」
それだけを言うと、プリヤンカはドルジに敬礼をして部屋を出ていく。
想像していた展開とはあまりにも違った目の前のやり取りに、頭を悩ませた。
──そもそも、何のために残ったのだったか。
自問しても、答えは返ってこない。
仕方なく、タニスもでは。とだけ言ってドルジの元から下がることにした。
驚くべきことが起きていたが、この話はマラートにはできない。
老人の戸惑いを真っ当に聴いてくれそうな人間をタニスは思い浮かべようとする。
どうしてか、思い浮かぶのはドルジ隊の若い女子ばかりだった。