Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Badlands
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
19 November 3151
『敵影確認。機影5。ローリングストーンは今回もGunslingerを出してきている。』
『前衛はPhoenixHawkとCommando。軽い機体だが......カラーリングはカロリンジャンだ。カロリンジャンは健在だぞ?』
先行した気圏戦闘機の2番機と5番機から、戦場の様子がそれぞれ報告される。
青いホロマップにメック3、戦車2で構成された立派な機甲部隊が浮かび上がった。
航空写真からも、2機のメックと2両の戦車にはカロリンジャンのマーキングが視認できる。
次々に更新されるデータにアリマはため息をついた。
要するに地上戦力の大半は頭数だけで言えば、ほぼカロリンジャンの戦力で構成されている。
今回、相対する戦力の大半はローリングストーンズのメックというアリマの想定は大ハズレだった。
『敵航空編隊が接近中。』
7番機、ナランの短い声が更に増えた脅威の接近を告げる。
今回の戦場には4番機のツェレンがいない。
出撃の前日になってシタに出撃を止められたせいで、航空隊は対地攻撃能力を大幅に失っていた。
近接航空支援だけではなく、部隊は残された3機の気圏戦闘機だけでローリングストーンの6機を足止めせねばならない。
戦場はいつもよりも数的不利が増していた。
「傭兵を甘く見るな。」
ドルジの一言がアリマの脳裏に浮かぶ。
カロリンジャンにもう真っ当な戦力は残っていない。とブリーフィングで評価をしていた彼女に、ドルジは珍しくその場で言葉を挟んだ。
氏族は中心領域に帰還して以来、100年間の歴史は傭兵にしてやられている歴史だと言っても過言ではない。
負けてばかりではないとは言え、中心領域の傭兵には何度も重要な局面で苦い目に遭わされている。
彼なりの経験に基づく助言だったのかもしれないが、その時のアリマは首を振った。
カロリンジャンは前回の損害で大損害を負っている。
損壊したメックの修繕は間に合わず、彼らが戦場に出せる機体はPhoenixHawk単機しか残らない。
公爵とカロリンジャンの間に交わされた戦場契約を履行することすら困難な状態だったはずなのだ。
そんな中で、カロリンジャンはどこからかCommandoと重戦車を調達して、この戦場に戦力を展開したことになる。
彼らの資金はほぼショート寸前のはずだ。
──ドルジが帰ってきたら、なんて言おう?
事前の想定とは違う戦場だった程度では彼は何も言わないだろう。
そんなことは戦場では日常だ。
明日以降、ドルジからの彼女への信頼が今日の分だけ以前よりも少しだけ下がる。
それだけの話。
今日もドルジはエミリーヤが雇用した傭兵団、社畜兵団と共に前線に出ていた。
既にTimberWolfは地形に姿を潜ませたまま、敵の先陣に向けてロケットの斉射を始めている。
常に最前線に身を置いている彼からの信頼がアリマのプライドだった。
それが少しでも失われるのかと思うと、彼女はひどく悲しい気持ちになる。
気圏戦闘機の航空戦の下でメック同士が激しい砲撃戦を始めていた。
続いて、カロリンジャンの重戦車も主砲を撃ち始める。
敵の射線はドルジのTimberWolfが潜む地形に集中した。
TimberWolfのミサイルの斉射のタイミングに合わせて、敵の重戦車の砲撃がTimberWolfの頭部を狙っている。
「相手の戦車の火器管制装置、性能いいわよ。油断しないで。」
アリマはドルジが被弾したような気がして、青いホロの情報に目を移した。
正常のままの機体ステータスにほっとして、モニターに目を戻す。
TimberWolfの両肩から発射されたミサイルが地形を穿つのを見届ける。
「ドルジ。ローリングストーンよりも相手の左翼に展開したCommandoに対処したほうがいいわ。」
いつも通り、次の行動の提案を投げてもドルジは返事を寄こさない。
最初はショックだったこの扱いだが、慣れてしまえばこれも一つの信頼の形のようにアリマは感じている。
敵の展開状況に目を凝らしていると、背後でストンと床に何かが落ちるような音が聞こえた。
今日の指揮車両はいつもの大型のトレーラーではない。
大量の通信機器が積まれた車両の後部にはアリマとプリヤンカしかいなかった。
彼女の立つあたりを振り返る。
「どうしたのよ......」
アリマはそう言いかけて、プリヤンカの見開かれた目と青ざめた表情で何かの異常が起きていることを察した。
すぐに姿勢を戻して、ホロに目を走らせる。
彼女がこんな表情を見せる理由があるとすれば、一つしかない。
遅れてプリヤンカから発せられた悲鳴が響く下で、TimberWolfの青白いホロが頭部を真っ赤に染めていた。