Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Chastre Government office
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
22 November 3151
「そないなこと言わんと。ほれ、先日はCommandoの用立てのお手伝いしたやないですか。大層活躍しはったと聞いておりまっせ?」
訛りの強い早口で通信機の向こうにまくしたてる。
もう一押しだ。
「あんさん達はどうでもええ話やろけど、その機体は元は狼はんのモノなんや。こっちにも色々と事情っちゅーもんがあんねや、こっちで新しいの用立てするさかい、ドタマに穴空いとるやつは譲ってもらわれへんやろか?」
通信機の先から、承諾の返事が返ってくる。
ただの傭兵の割に手堅い相手だった。
「おおきに。また、ええ話があったらお願いしますわ。」
ほならな。と言って通信を終えると、アレフは一つ大きなため息をつく。
脇から差し出されたコップに口をつける。
「商談成立おめでとうございます。」
水の入ったコップを差し出した老人はそんな彼に笑みを投げかけた。
「機関銃のように舌が回るのですね。普段のあなたからはとても想像がつきません。」
「この話し方の方が、成約率が高いんですよ。」
もうかりまっか?から初めて、おおきに。で終える。
ツォンシャンで建機会社で働いていた時代に覚えた小技だ。
主任、班長、係長と昇格するにつれて必要になった技術が、ここにきて役に立っている。
「次は、ローリングストーンズですか。」
この街の執政官が地下格納庫の小さな司令室の狭い座席の上から、暗い格納庫の中を覗く。
ツォンシャンの闇市で手に入れた、赤い装甲の胴部に逆関節の脚を生やしたような機体がそこには立っていた。
数ヶ月に渡って共に死線を潜り抜けた戦友だったが、アレフは機体には愛着を持っていない。
戦闘用メックに乗っている以上に、ドーザーブレードやシャベルを腕に付けた民間用のメックに乗っている。
アレフから見れば、このメックも使い分け、乗り分ける機材の一つでしかない。
クリエフチの政庁の地下にメックを何機も隠し持っていた執政も同じだ。
彼にとっても、この兵器はカードでしかなく、商品ですらない。
約束を違えて、補給品をほとんど寄こさないLIC。
その裏で執政は大量の弾薬や爆薬をシャストル要塞に横流しすることを約束してくれた。
無償ではなかったが、破格ではある。
アラームが次の商談の時間を知らせた。
アレフは大きく息を吸ってから立ち上がる。
「ほな、始めましょか。」
座っていても良かったのだが、喋るとなるとつい立ち上がってしまう。
そのまま司令室のコンソールのキーを叩いて、予約されていた通信の回線を操作した。
通信が繋がった青いサインをみるやいなや、アレフは口を開く。
「もうかりまっか?やぁやぁ、噂の傭兵中隊、ローリングストーンズはんとお話させてもらえるとは光栄ですわ。今日はお近づきの標にええ話を持ってきましたのや。」
相手が口を挟む間もないほどに、用意していたセリフを一方的にしゃべり続ける。
――戦場ではやられたい放題やったが、こっから先は狐の狩場や。
チャリンチャリンと音を鳴らす、甘い香りのお菓子の奪い合い。
足らなかった分は、次でしっかりと取り立てる。
今回は、多少の損は致し方がなかった。
黄金色の音がアレフには確かに聞こえている。