Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Wasteland Roadway
Zhongshan System,Zuhai
Jade Falcon
11 January 3151
郊外の夜の舗装されていない道を走る車の中でアレフは急いでいた。
昨日の雨で道はぬかるみ、街灯すらない荒野は暗闇が広がっていた。追い打ちをかけるかのように車のフロントライトの調子が悪く、危うげな明滅を繰り返していた。
仕事で乗っている二足歩行の工業用メックと比べると視界も悪かった。
フロントライトがいよいよ壊れる前に、アレフはなんとか明るい市街までたどり着きたかった。
しかし、その思考が突然、金属的な衝撃音と共に引き裂かれる。ガクン、と車が前後に揺れた。反射的にブレーキを踏み込むが、すでに車体は停止している。フロントガラスの前方は暗闇に覆われていた。
弱々しいフロントライトの明かりが暗い翡翠色をした金属製の何かを照らしていた。
違和感を覚えた瞬間、アレフの車に人影が降ってきた。衝突で既に歪んでいた車のボンネットがひしゃげて曲がる。
焦りとも恐怖ともつかない感情に突き動かされ、アレフは車を飛び出した。暗い夜道で足を取られ、よろめきながらも彼は車のフロントへと向かう。その瞬間、背後から首根っこをつかまれた。
「パイロットだな?」
後ろから低く冷たい声が響く。アレフが顔だけ振り向くと、そこには背の高い男が立っている。上着の二の腕に白隼のマークが縫い付けられていた。フライトジャケットだろうか?
闇に浮かんだ双眸が、アレフの全てを見透かしているかのようだった。心臓が跳ね上がり、言葉が喉に詰まる。
一目でわかる。相手はカタギじゃない。
メックの操作ができるな?と聞かれて、彼は首をカクカクと縦に振る。アレフは内燃機関動力のメックの搭乗員だった。
採用だ。と一言告げられると、アレフの体が急に上方向に引き上げられ、地面がどんどん離れていく。
どすんと何かのコクピットの座席後部のベイに押し込まれたらしく、暗がりの中、コンソールの機器が放つ微かな光が、その不気味さをさらに強調する。
彼を攫った男についてはシートの背が邪魔で顔を伺えない。
コクピット内に漂う空気が、彼をますます不安にさせた。機体のボイスアシスタントの声だけが聞こえる。核融合エンジン、火器管制システム、機体制御システム。単語だけ拾えばここはバトルメックの頭部に間違いなかった。
どうして、こんなことに。何もわからない。抵抗も、声をあげることもできず、アレフは連れ去られた。