※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.16_02

Fort Chastre Pad2

Krievci System,Chastre

Jade Falcon

30 November 3151

 

「Visigothは出せない」

 

 ドルマ―の一言に、部屋は静まり返った。

 

 海上を進む輸送船団を、LICが見つけたのは4日前。

 船団の輸送船の数から敵の規模を推定して、エージェントたちが顔を見合わせたのが3日前。

 シャストルに駐留していた守備隊のほとんどが、夜のうちに首都を発ったと聞いて慌てたのが2日前。

 ビーチアーヴが要塞化されていたことに気が付いたのが1日前。

 

 手元に呼び戻していたエージェント・ファーベと共に、エミリーヤがシャストルの基地に辿り着いたのが昨晩。

 誰もいない、がらんどうになった基地を数時間彷徨った末、ようやく2番パッドで静かに停泊するユニオン級降下船に辿り着いた。

 ようやく彼らを見つけたのに、エミリーヤは何を口にすれば良いか分からなかった。

 この部隊は既に、クリエフチを発つ準備を完全に終えて、いつでも飛び立てる状態にあった。

 

 ファーベから最後に得たこの部隊の状況から考えれば、彼らがこの星を去ろうとするのはおかしくない。

 アンネは聖域に引き篭もり、数週間は誰とも会っていない。

 ツェレンとプリヤンカは血液検査などの結果から、出撃も面会も禁止。

 彼女らの懐妊が報告されていたが、処置から考えれば精神面の問題なのは明らかだ。

 降下船の周囲を固めていたバトルアーマーの兵士に頼んでも、2人はアリマにすら会わせてもらえない。

 警備を無理矢理に突破して、ようやく会えたのが気圏戦闘機隊の女隊長だった。

 彼女に部隊の状況説明と、公爵側の上陸阻止への協力を請うても、短く拒絶される。

「メック戦力を提供する契約はしたかもしれない。だが、気圏戦闘機の戦力を出す契約はどこにもない。」

 そう言って、彼女は首を振った。

 

 ならば、10月の頭のリンツ港襲撃はどうなる?と、エミリーヤは口にしそうになる。

 しかし、この部隊は名目上の雇用主の名を使うだけで、なんとでも言い訳ができる立場だ。 

 彼女らには、この星系の執政官という後ろ盾がある。

  

「敵上陸部隊にメック戦力があるかもしれない。契約に従うのならお前たちにはこれに対抗する戦力を出す義務がある。」

 エミリーヤは、精一杯の抵抗を試みた。

 

 ドルジの部隊の耳目が機能していないのであれば、女隊長にはこれを拒絶する手段を持っているはずがない。 

 だが、エミリーヤには、この部隊はまだ死んでいない。という予感があった。

 部屋の壁面のスクリーンに広がった情報を見て、それは確信に変わる。

 

 公爵の上陸部隊は9000人強。

 上陸用の舟艇とホバー戦車からなる揚陸部隊に加えて、空母に無理矢理載せたグライダーから空挺部隊が数個大隊。

 相手側に不足している航空支援は艦隊からの砲撃で補い、数に任せて無理矢理に上陸させる。

 策も何もない物量作戦。これを3つの浜のうちの1つ、ビーチアヴィにて展開する算段だ。

 

 航空写真と気象図、地形図には敵の作戦概要に加えて、更にエミリーヤの知らない情報がスクリーンに投影されている。

 浜では、数百名のソラーマ部隊の配置が記されていた。どこから調達したのか、海岸は自動砲台と地雷、障害物で既に要塞化されている。

 この守備隊が、十数倍の物量を受け止める運命の日付だろう。「来月の2日」と書かれた赤い文字が、ビーチアーヴの地図上に走り書きされている。

 

「敵の上陸部隊にメックはいない。お分かりいただけたか?」

 少しの沈黙の後、ドルマ―がエミリーヤに静かに問うた。

 

 こんなにヒドい分からせ方があるだろうか?

 これまでも、この部隊には散々にかき回されてきている。

 

 だが、ここまでコケにされていたとは、エミリーヤは夢にも思っていなかった。

 

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