Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Over Chastre
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
5 December 3151
『HUDとサブモニターのマップ上に飛行経路を表示します。』
ドルマーの目の前の視界に黄色い薄い帯が表示される。
少しの間だけ、青い空に敷かれた黄土の路の上を機体を走らせたが、すぐに首を振った。
「サブモニターへの表示だけでいいわ。視界を邪魔されたくないの。」
苦情を言うと、すぐに視界は戻る。
アレフの親切はありがたい。でも、できればドルマーはあまりいつもと違うことをしたくなかった。
高度を上げてから、コクピットの操作盤に指を載せていつもの設定を呼び出す。
ヘルメットのバイザーが彼女の頭の動きに合わせて機体の周りの風景を映し続ける。
一息ついてから、モニターの飛行経路に目を通した。
「飛行高度20ft!?」
『墜落さえしなければ、もっと低く飛んでいただいても結構です。』
メックの背の高さより低い高度を飛べ。という指示にドルマーは小さく咳込む。
「私はゾリグじゃないのよ?」
『今回の出撃はゾリグさんの救出ですからね、当然です。』
何を当たり前のことを。アレフはさも不思議そうな声でドルマーの言葉を肯定する。
超低空飛行で、敵の兵士が潜んでいる茂みを揺らすだけ。
超音速で飛べば、それだけで常人は立っていることすら困難だ。
理屈はドルマーにもわかる。
ただ、戦場では空しい主張なのかもしれないが、それは間違いなく危険な飛行だった。
誰にでもできることではない。
「機銃掃射で敵の兵士を倒すのじゃダメなの?」
念のために確認をする。
『お忘れですか?装備を電子戦用に切り替えたせいで、ドルマーさんのVisigothには120発の機銃しか武装がないんです。弾の数は有限です。』
万が一、相手が地形に機甲戦力を潜めていた場合に備えて温存しろ。という彼の主張もわかった。
ただ、あと30分もすれば日は沈みはじめ地上の付近は闇の深まりがはじまる。
操縦桿の操作を少しでも誤れば、大地を転げて赤い染みになる行いだった。
ヘルメットのバイザーに表示される高度の数字の色を調節する。
明度を上げれば、暗い中でも見やすくなった。
基地から目的の小屋の上までは片道で数分の距離しかない。
空から小さな小屋を見下ろすと、屋根に空いた穴の下からチラチラと何かに反射するような光が見えた。
ドルマーは一度小屋から少し距離を空けた場所に機体を退避させる。
大きく息を吸って吐いた後に、覚悟を決めて高度を一気に下げ始めた。