Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Shack side by Country road
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
5 December 3151
空を切る気配が頭上を過ぎた後に轟音が耳に届く。
頭を低く下げて走ったところで、身を隠すようなもののない荒原では被弾面積を下げる以上の効果は期待できない。
──闇に紛れた方がマシだったんじゃねぇか?
首を竦めて走る。
林の中に入ってしまえば、狙撃兵に狙われることもない。
ただ、そこに辿り着くまでは4、5マイルの距離があった。
「ゾリグ、左後方から敵です。」
無言で後ろを走っていたナランから警告を発する。
とっさに左右を確認して、数百ヤード先のくぼみを指し示す。
走る勢いのまま、滑り込むように体を潜り込ませる。
ナランもすぐに同じ場所に飛び込んできた。
「砲塔は口径の小さい機関銃です。」
巨漢の身体が収まるとさすがにくぼみの中は狭い。
頭だけをひょいと出して、相手の正体を確かめると元の場所に体を収める。
6輪の軽装甲を纏った偵察用の車両だな。とナランに確認すると彼は頷く。
「ドルマーの対応を待ってる暇はない。やれるか?」
「車体の側面が見えています。やります。」
既に巨大な対物ライフルの準備を整えていた相棒は肩当の部分を肩に載せるようにして巨砲を構える。
爆音が2度だけ響く。
ナランのほぼ真下で仰向けになって、身を潜めていたゾリグの真上に熱い大型の薬莢が2つ落ちてきた。
地面に落ちた金属塊が、土塊を焼きながらその身を沈めていく。
風の音だけの時間が過ぎた後に、一度だけ大きな音と共に地面が揺れた。
「終わりです。」
抑揚のない一言と共にナランが窪みの中に戻ってくる。
もう一走りするために、本体から弾倉を外し、ストックを畳んでいく。
「いつでもいけます。」
ナランが荷物を肩にかけるのとほとんど同時に空からの爆音が響く。
唸るような音に続いて、地面を揺らすような音が遠くから響いた。
『フォンルックナー、戦車4両が平野に入った。さすがにライフルで撃ち抜くのは無理よ。』
「気圏戦闘機の機銃でも無理でしょう。」
ナランは手の平に収めた小さな銀色で縁取られた黒い端末から聞こえたドルマーの声に返事をする。
丸太のように太い腕に巻かれたチェーンと紐で繋がれていると、通信機というよりは何かのアクセサリーのように見えた。
「走りましょう、それしかありません。」
急かすように声をかけられて、ゾリグは頷く。
ナランが3を数えるのに合わせて、再び地面の上に身を躍らせた。