Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Fort Chastre Pad2,Launch Umbilical Tower
Krievci System,Chastre
Jade Falcon
8 December 3151
白い煙が空高く立ち昇っていく。
その先には小さな光点のようになった銀色のシャトルが飛んでいるはずだ。
あたしはアンネに誘われて、降下船の発射台の整備棟にやってきている。
「ねぇ、あの船に何人乗ってるのかな?」
あたしは気になって、自分の隣に立っていたプリヤンカに訊ねてみた。
何人が乗っているのかわかっても、それがこの戦争に参加した少年兵の内のどれくらいなのかはわからない。
それでも、たくさんの子が助かったのか、ほんの少ししか生き残れなかったのかは知りたいと思った。
「220人ほどと聞いています。」
いつもはバシッとした服を着ていた彼女は、今日はゆったりとした服を纏っている。
あたしの疑問に答える声も、ハキハキとした若い女士官の声ではなくて、穏やかな落ち着いた声になっていた。
突き出たお腹を両手で抱えるように撫でる彼女はすっかりと年上の姉というよりは、一人の母親のオーラを放っている。
眼鏡の下で浮かべている伏目がちな表情は、彼女が常にお腹の中の子供と対話をしているように感じられた。
振り返ってみれば、ローブを風に棚引かせながら火を焚くアンネのお腹も、随分と大きくなっている。
鉢の中から湧き出るお香の香りが鼻をくすぐった。
突然、あたしの胸に寂しさがやってくる。
──いつまでも、あたしのままではいられないんだ。
ずっと、ここでみんなに甘えていられたら。
そんな想いを胸に、あたしは今を生きている。
でも、みんなはお母さんになったりして、あたしもいつかはおばちゃんになってしまう。
そんな未来の話でなくても、この船の中で赤ちゃんが産まれてくれば、あたしはお姉さんだ。
そんな日は、すぐそこまで来ている。
アンネが取り出したいくつかの袋の一つをあたしにも手渡した。
中には真っ赤な花びらが何枚も入っている。
一掴みだけそれを握って、宙に放った。
何度か同じことを繰り返すと急に目から涙がこぼれ始める。
悲しいのか、寂しいのかわからない。
本当は、この花びらは浜で死んだソラーマの爺ちゃん達のためのものだ。
でも、あたしが流している涙は間違いなく死んだ彼らのためのものではなくて、身勝手なあたしのわがままな何かだ。
誰に何を謝ればいいのか、わからない。
でも、誰かに向けてごめんなさい。と思う気持ちだけはとにかく止まらなかった。