Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
EP.03_01
Ammo Dump Runway
Zhongshan System,Zuhai
Jade Falcon
18 December 3150
ゾリグの5番機が滑走路から飛び立っていく。
続けて8番機。
活火山の噴火に伴う気象影響の確認任務らしい。
緊急発進する機体が全て空に上がると、ようやく上空で着陸待機をしていた機体が一機ずつ地上に帰ってくる。
訓練後、ユルは飛行記録を確認しながら、教官役のツェレンに若手の様子を訊ねた。
「8~10番機は可もなく不可もなく。6番機の子は慎重でいい子よ。警戒任務にも向いてるかも。」
ユルは頷く。ゾリグの負担を減らせるのは、純粋にありがたい。
「7番機は?」
「教本通りだけど......ちょっと勇敢すぎるかな。」
ツェレンは少し目を細めて、駐機場に並ぶVisigothを見た。
怖いもの知らずの斬り込み役ってとこかしら。と不安げな表情をする。
7番機、シフは目標をレーザー砲の射程に収めるために際どい角度から相手に接近をする傾向がある。
これは、機体制御や回避技術が未熟なうちにやる飛行ではない。
「機体の装備パターンをBかCに変えてあげた方が彼女が安全かも?」
ツェレンの提案にユルはわずかに首を振った。
武装の射程を伸ばせば、機体出力の多くを火力に割くことになる。
そのぶん推力や冷却系に皺を寄せるリスクを若手には負わせられない。
何より、整備補給の問題はユルだけでは解消できなかった。
Visigothの装備のパターンを増やすためにはコボルを説得しなければならなかった。
帰投したばかりの若いパイロット達が次々とツェレンに手を振った。
ツェレンが柔らかい笑みを浮かべて、手を振り返す。
空では鬼の女教官。地上では隊員の姉役であり母親役。
ギャップが若い隊員達の心に強く残っている。
かつて、彼女に不適切な接触を試みた者がいた。
その後任として今、ユルがいる。
「悩んでるのね。」
ツェレンが視線に気づいたのか、ふと笑ってこちらに歩み寄る。
整った顔立ち、柔らかな声音、身のこなしにまで漂う品の良さ。
こうして笑うと、彼女を戦場に連れて出ること自体が罪のように思える。
誰かが彼女に惹かれるのは無理もない、とユルは思う。
だからこそ、ユルは彼女と距離を保たねばならない。
ユルの心配をよそにツェレンに肩をぽん、と軽く叩かれる。
「隊長さん、頑張って。」
彼女の行動に悪意はない。それはわかっている。
だが、こうした無防備さが誤解を生むことも、また事実だった。
ユルは小さくため息をつき、返事をしなかった。