Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union Class Dropship,Sacred Realm
Krievci System,Interplanetary Space
House Sabor
20 December 3151
聖域には高い天井もなければ、無尽蔵の広がりもない。
ここは常識的なサイズの宇宙船の一室。
そう言われても信じろというほうが無理があった。
壁の黒が光を吸い、天井の闇がそれを見上げる者の目を狂わせる。
室内のカラクリを知っていても、中に迷い込んだ人間はなお惑わされた。
目を凝らせば凝らすほど、視界が巡り、天地がひっくり返るような錯覚を女医は覚える。
シタは頭を振って、視線の先を暗闇から逸らした。
暗闇の向こうにあるはずの聖域の果ては目に入らない。
彼女が上に横たわっている祭壇の一面だけが床に置かれた蝋燭に煌々と照らされている。
大きく開かれた胸元に自分の手を添えた。
汗ばんで光を反射する褐色の肌けた膨らみは、まだ先を尖らせたままにしている。
荒々しい手でそこを散々に弄られた感触を思い出すと、肩が小さく跳ねた。
名残惜しむかのように両手の指先で丹念に撫でてから、シタは下着を元の位置に戻してそれを隠す。
両手で白衣とシャツのボタンを留めてから、上半身をゆっくりと起こした。
身体の傾きを戻すと、さっきは身体の中に入ってきた液体が今度は重力に従って来た道を引き返して行くのが分かる。
腹の下をゆっくりと流れが伝う感触に息を飲む。
目を瞑ってそれに堪えた後に、今更声を抑えても仕方がないことに気が付いた。
シタは股下の茂みにぬくもりが溜まるのを感じながら、祭壇から立ち上がる。
腰の上にまで捲り上げられた白衣とスカートをおろしてしわを伸ばした。
こうなることは分かっていた。
だから、下の下着はそうなる前から付けていない。
今、この船の中にあの荒神を鎮められる立ち位置にある女はシタしかいなかった。
星の巡りの悪戯か、忙しさの合間に身を空けられることに気がついてしまう。いつでも望まれた時に、望んだ時に。
足を僅かに開いて、穿いていない解放感で少しの間だけ身体を震わせる。
身体の奥底から溢れ出た液体が、内腿を伝ってぽたぽたと床に垂れ落ちた。
何気なく白衣のポケットに手を入れると、忍ばせていた薬錠の瓶に指先が触れる。
シタは静かに固い茶色い瓶を取り出して、ラベルの文字を目で確かめた。
こんなものを飲むから、身体を許してしまうのか。
それとも、身体を許してしまうから、こんなもの飲んでいるのか。
こんな抵抗は無意味だと嗤われたい自分に苦笑する。
破城槌が鋼鉄の門を破るように、お前の学んだ薬学などそんなものだ。と一蹴されたい。
一撃で壊そうとしなくていい。幾度も打ち込まれた末に自分の深奥までを貫かれることをシタは間違いなく期待していた。
予定通りの時刻に、閉ざされていた聖域の扉が開いて聖域の守護者が帰還する。
祭壇の前に立つシタとは僅かに目を合わせるだけで、言葉すら交わすことがない。
黙って彼女に背を向けて、そこに立ち塞がった。
彼がここに立ち続ける限り、シタも子を宿す側にはなるわけにはいかない。
エステロスの外に出ても結局のところ、軍医を続けている自分を不思議に思う。
日々やっていることに前と違いはない。
むしろ、過酷になった。
それでも、シタは自分に自由をくれたここを離れるつもりはない。
いつかは彼女もこの腹にこの家族の子を成すのだと思っていた。