Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union Class Dropship,Medic Room
Krievci System,Interplanetary Space
House Sabor
24 December 3151
シタに呼び出された。
軍医に呼び出されること自体は珍しい話ではない。
問題はその内容だ。
「トヤーちゃんのことで話があるの。」
シタの言葉を思い出す。
トヤーのことなのに、本人ではなく自分が呼ばれる。
普通なら考えにくい。
だが、ゾリグには心当たりがあった。あり過ぎるほどに。
ドルジと臥所を共にしていた女達は5人のうち3人が腹に子を宿している。
連日のように同じことをしていれば、やがてそうなるのは当たり前だった。
もう、部隊の中でトヤーとゾリグの間柄を知らない人間はいない。
嘘から出た真という言葉がある。最初は皆の勘違いだったが、その翌日にはそれは事実となった。
昼夜を問う意味のない星間移動の最中に2人の距離は一気に縮む。
あれから3ヶ月が経った今なら、ゾリグが呼ばれることに何の不思議もない。
──俺が父親か。
シタの用事の内容にそう当たりをつけると落ち着かず、呼び出された時間よりもだいぶ早くから待機している。
シタが医務室に現れるのをいまかいまかと待ち侘びた。
女医は呼び出した時間の数分前に現れる。
「急に呼び出してごめんなさいね。」
「いや、こっちが早く来すぎただけだ。」
シタは医務室に引き篭もっているタイプの軍医では無い。
3人の妊婦の他に何人もの負傷兵を診るために彼女は毎日、艦内を歩き回っている。
時間通りに予定の場所にやって来れる方が不思議なほどに多忙なはずだった。
「噂通りの彼氏さんね。」
シタに揶揄われるとゾリグはくすぐったさを感じる。
「今日、その彼氏さんを呼んだのは彼女さんの身体の状態についてよ。トヤーちゃんの年齢のことを考えれば、本人よりも先に君にお知らせした方が良いと思って。」
女医の判断に頷きを返す。
つい、先日トヤーは19歳になった。
母親になると言われた時に彼女がどんな反応をするのかはわからない。
ゾリグの反応を確かめた女医は言葉を続ける。
「あと半年以内に、トヤーちゃんは...」
淡々とした口調に祝福の気配を感じさせない。
患者が過剰なプレッシャーを覚えるようなことはしない。それがこの女医の良いところでもある。
──母親になるのか...。
「死ぬわ。」
ゾリグは耳にした言葉を飲み込めずに吐き気すら覚える。
全く予期していなかった女医の言葉を理解することができなかった。