Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ep.19_01
Union class Dropship , Break room
Krievci System ,Interplanetary Space
Jade Falcon
25 December 3151
「第2回トヤーさんの余生を考える会議〜。」
明るい声で円陣の中央でポーズを決めたトヤーが会議の始まりを告げると、彼女を囲んでいるメンバーは一斉に彼女に拍手を浴びせる。
イェーイと声を揃える整備班の女子達にノリに加われなかった自分に、シタは少し悲しみを覚えた。
むしろ隣に座って手を叩くナランの方が、自分よりもこの場に馴染んでいるような気がしてならない。
「昨日、ゾリグはシタ先生からあたしの余命の告知を受けたんだけど~。なんと!その後、あいつは少しあたしとパコって寝ちゃいました!」
悩む彼氏の醜態を一息に報告すると、トヤーは胸を張って、一堂に顔を膨らませてみせる。
それを聞いた黄色い服のペトロワとシャロンが、揃ってブーイングの声を上げた。
「ゾリグ様、普段はイケメンっぽいけど、そういうとこは弱いのですね。」
「大きな判断はしたことないもんね。ビーチに行ったのだって、ドルジとアリマ姉が残してた作戦に乗っかっただけでしょ?」
若い女子達の辛辣な言葉に、ナランが珍しく困ったような顔をする。
彼の相棒、戦士ゾリグの経験不足を容赦なく突かれたからだろう。
「とにかく、このままだと彼氏がカッコ悪いまんまでトヤーさんが困るので、あたしは部屋に戻ったら、今度は自分でゾリグから話を聞き出します。」
「彼氏のアレが元気ないと困るもんねー。」
拳を振り上げて決意を語るトヤーに、シャロンが金髪を掻き上げながら茶々を入れた。
それも困るけどさぁ?と、彼女は本当に困った表情をする。
トヤーは普段の身なりや言葉選びに釣り合わない、秩序だった生活をしていた。
目の前にナランという異性がいるにも関わらず、彼女は整備服の上着を肌けて、袖を腰のあたりで結んでいる。
小柄な身長に不釣り合いな、大きな果実を覆うブラトップは常にその裾を宙に揺らしていて、彼女の臍を見え隠れさせていた。
その下の肌は、戦場に身を置いているとは思えないほどに、丁寧に手入れをされて艶を放っている。
トヤーが両腕を高く掲げても、腋の内側には丁寧な処置がされた若い肌色しか目に入らなかった。
何の前触れもなく、服の上からその胸の曲面を、両手でサチコがさっと撫でる。
驚くトヤーをまるで意に介さずに、彼女はキッとシタの方に顔を向けた。
「先生、遺伝子を操作すれば、私もこのくらいの胸になりますか?」
「年齢的に、もう大きく変わることは無いわ。オスクは今の貴方が良いのよ。」
余計な事は口にせず、シタは彼女の言葉を否定する。
信じてあげて。と一言だけ加えると、良家の令嬢はすぐに引き下がった。
「胸の豊かさで男の人の心を掴めたとしても、命が短く終わってしまうとしたら、とても悲しいですね。」
「ふふん、美人薄命ってやつね。」
どんどん脱線していく会話に口を挟むことで、ペトロワが話を本題に戻そうとする。
首を振る彼女の表情は、真剣にトヤーの行く末を案じていた。
しかしそれを聞いたトヤーは、難しい言葉を口にしながらなぜか胸を張る。
唐突に、揉ませろ、何をする、もっと優しく。と4人で身体の揉み合いが始まると、しばらく会議は中断した。
「で、今日ゾリグ様が決断しなかったらどうなるんだよ?」
しばらくして、両肩で息をしながら、シャロンはトヤーに訊ねる。
「手術はしないから、あたしは半年以内に死ぬ。」
顔の前で親指を上に向けて見せながら、当人は言い切った。
「でも、あと半年もあるんだよ。手術が上手くいかない時より長く生きてられるし、それはそれでアリなんじゃないかなぁ?」
だって、もし、手術失敗したらそれで終わりでしょ?とトヤーに真っすぐな目で見つめられれば、シタは首を縦に振るしかない。
彼女はもう全ての覚悟を決めている。
全ての判断をゾリグに委ね、その結果がどうなろうと一切を受け入れる覚悟が、この少女にはあった。
――大人ってなんだろうな。
自分よりも年上のナランの表情を、シタはこっそりと確かめる。
ゾリグは自分の相棒にですら、まだ何の相談もしていない。
トヤーの状況についても、それを解決するには、この船の航路を変更しなければならないことについても。
艦橋で舵輪を握っているナランであれば、彼に具体的な手順すら助言ができるはずだった。
だが、ゾリグはそうせずに、彼自身の中に何かを溜めている。
シタは、彼に助け舟を出すべきではないかと、ナランに何度か声をかけた。
しかし寡黙な戦士は、そのたびに首を振る。
――これは、年長の者から手出しするべきではない。
そう言われるたびに、彼女は自分がどうすべきか悩んだ。
シタはナランやゾリグよりも年若く、年齢で言えばペトロワに近い。
それなのに、彼女の立ち位置は医者という身分が故に女子4人組とは異なる扱いをされている。
多くを知っているが故に、彼女はとても歯痒い想いをしなければならない。
シタはそれを自覚するたびに、強く胸を締め付けられた。