※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

167 / 281
輝石
Ep.19_01


Union class Dropship , Break room

Krievci System ,Interplanetary Space

Jade Falcon

25 December 3151

 

「第2回トヤーさんの余生を考える会議〜。」

 明るい声で円陣の中央でポーズを決めたトヤーが会議の始まりを告げると、彼女を囲んでいるメンバーは一斉に彼女に拍手を浴びせる。

 イェーイと声を揃える整備班の女子達にノリに加われなかった自分に、シタは少し悲しみを覚えた。

 むしろ隣に座って手を叩くナランの方が、自分よりもこの場に馴染んでいるような気がしてならない。

「昨日、ゾリグはシタ先生からあたしの余命の告知を受けたんだけど~。なんと!その後、あいつは少しあたしとパコって寝ちゃいました!」

 悩む彼氏の醜態を一息に報告すると、トヤーは胸を張って、一堂に顔を膨らませてみせる。

 それを聞いた黄色い服のペトロワとシャロンが、揃ってブーイングの声を上げた。

「ゾリグ様、普段はイケメンっぽいけど、そういうとこは弱いのですね。」

「大きな判断はしたことないもんね。ビーチに行ったのだって、ドルジとアリマ姉が残してた作戦に乗っかっただけでしょ?」

 若い女子達の辛辣な言葉に、ナランが珍しく困ったような顔をする。

 彼の相棒、戦士ゾリグの経験不足を容赦なく突かれたからだろう。

「とにかく、このままだと彼氏がカッコ悪いまんまでトヤーさんが困るので、あたしは部屋に戻ったら、今度は自分でゾリグから話を聞き出します。」

「彼氏のアレが元気ないと困るもんねー。」

 拳を振り上げて決意を語るトヤーに、シャロンが金髪を掻き上げながら茶々を入れた。

 それも困るけどさぁ?と、彼女は本当に困った表情をする。

 トヤーは普段の身なりや言葉選びに釣り合わない、秩序だった生活をしていた。

 目の前にナランという異性がいるにも関わらず、彼女は整備服の上着を肌けて、袖を腰のあたりで結んでいる。

 小柄な身長に不釣り合いな、大きな果実を覆うブラトップは常にその裾を宙に揺らしていて、彼女の臍を見え隠れさせていた。

 その下の肌は、戦場に身を置いているとは思えないほどに、丁寧に手入れをされて艶を放っている。

 トヤーが両腕を高く掲げても、腋の内側には丁寧な処置がされた若い肌色しか目に入らなかった。

 

 何の前触れもなく、服の上からその胸の曲面を、両手でサチコがさっと撫でる。

 驚くトヤーをまるで意に介さずに、彼女はキッとシタの方に顔を向けた。

「先生、遺伝子を操作すれば、私もこのくらいの胸になりますか?」

「年齢的に、もう大きく変わることは無いわ。オスクは今の貴方が良いのよ。」

 余計な事は口にせず、シタは彼女の言葉を否定する。

 信じてあげて。と一言だけ加えると、良家の令嬢はすぐに引き下がった。

「胸の豊かさで男の人の心を掴めたとしても、命が短く終わってしまうとしたら、とても悲しいですね。」

「ふふん、美人薄命ってやつね。」

 どんどん脱線していく会話に口を挟むことで、ペトロワが話を本題に戻そうとする。

 首を振る彼女の表情は、真剣にトヤーの行く末を案じていた。

 しかしそれを聞いたトヤーは、難しい言葉を口にしながらなぜか胸を張る。

 唐突に、揉ませろ、何をする、もっと優しく。と4人で身体の揉み合いが始まると、しばらく会議は中断した。

 

「で、今日ゾリグ様が決断しなかったらどうなるんだよ?」

 しばらくして、両肩で息をしながら、シャロンはトヤーに訊ねる。

「手術はしないから、あたしは半年以内に死ぬ。」

 顔の前で親指を上に向けて見せながら、当人は言い切った。

「でも、あと半年もあるんだよ。手術が上手くいかない時より長く生きてられるし、それはそれでアリなんじゃないかなぁ?」

 だって、もし、手術失敗したらそれで終わりでしょ?とトヤーに真っすぐな目で見つめられれば、シタは首を縦に振るしかない。

 彼女はもう全ての覚悟を決めている。

 全ての判断をゾリグに委ね、その結果がどうなろうと一切を受け入れる覚悟が、この少女にはあった。

 

――大人ってなんだろうな。

 

 自分よりも年上のナランの表情を、シタはこっそりと確かめる。

 ゾリグは自分の相棒にですら、まだ何の相談もしていない。

 トヤーの状況についても、それを解決するには、この船の航路を変更しなければならないことについても。

 艦橋で舵輪を握っているナランであれば、彼に具体的な手順すら助言ができるはずだった。

 だが、ゾリグはそうせずに、彼自身の中に何かを溜めている。

 シタは、彼に助け舟を出すべきではないかと、ナランに何度か声をかけた。

 しかし寡黙な戦士は、そのたびに首を振る。

 

――これは、年長の者から手出しするべきではない。

 

 そう言われるたびに、彼女は自分がどうすべきか悩んだ。

 シタはナランやゾリグよりも年若く、年齢で言えばペトロワに近い。

 それなのに、彼女の立ち位置は医者という身分が故に女子4人組とは異なる扱いをされている。

 多くを知っているが故に、彼女はとても歯痒い想いをしなければならない。

 シタはそれを自覚するたびに、強く胸を締め付けられた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。