Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship , Jail
Sargasso System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
25 December 3151
空になった食器が盆に戻されて、乾いた音を立てる。
「じゃあな。」
盆をシャロンの方へと押しやると、オーケは彼女が立ち去るのを待つように黙った。
シャロンが動かないでいると、独房の中は居心地の悪い静けさに満たされる。
「オレ、悔しいんだ。」
肩まで届く金髪を指先で弄りながら、シャロンが突然長い沈黙を破った。
オーケは艦内でトヤー達の私室に突然踏み込んだ変態扱いになっている。トヤーの身体の異変や余命の話が徐々に知られてからもそれは変わらない。
噂はトヤーのナイトとしてツォンシャン行きを決めたゾリグと変質者のオーケの2種類になった。
真相を知るシャロンはその2つの噂に吐き気すら覚える。
独房に入れられて、減棒されて、変質者と皆に噂されて。
「お前、いいことないじゃんかよ。」
オーケの話をしながら、シャロンは目に涙を浮かべた。
しばらく黙ってシャロンの話を聞いていた彼はそっぽを向いたまま、口を開く。
「トヤーちゃんが手術受けれることになったじゃんかよ。結果がどうなっても、自分で納得できるようになったんだろ?一番良かったことを無視すんなよ。」
今日の一番の成果を無かったことにされたことにオーケは腹を立てている。
その他の評価を気にしないオーケの姿勢はカッコつけではない。
彼は本当に自分の幸せに興味がないのだ。
周りからの扱いが悪いのも妙な噂が流れるのも、今に始まったことじゃない。
いつの頃からかそれを気にしなくなり、そのうち彼はすっかり慣れてしまっていた。
それがいつから始まったのかは、シャロンが一番よく知っている。
シャロンは彼の様子に、髪の毛を掻きむしった。
「それじゃ、オレが納得いかねぇんだよ。」
目に溢れていた涙が遂に溢れ始めた。堰を切った液体は絶え間なく流れ落ちる。
シャロンはオーケ自身にも報われて欲しかった。
でも、肝心の本人はもうそこには興味がない。
どうにか彼自身にも良い目を見て欲しかった。
「なぁ、もうオレじゃダメか?」
黄色い整備服の前を開いてオーケを挑発する。
艦長に配膳役を指名された時に、シャロンは心の中で少し期待をしていた。
5年間の過ちを正せるかもしれないと。
そんなつもりではなかったが、陳腐な手で彼を慰めようとしている。
「ほら、オレので良ければ触って良いぞ。少しは良い目をみたいだろう?」
5年前は分からなかった。
でも、今のシャロンならばこの男の良さが分かる。
オーケは少しだけ振り返った後に、頭の方向を元に戻す。
「俺はお前の永遠の相手じゃないだろ?」
いらんいらん。とシャロンをどこかに追い払うように手をひらつかせる。
それを見ても、今日のシャロンの心は揺らがない。むしろそれを見て、より決意が定まった。
「いや、今日はオーケの好きにしてくれて良いよ。」
待たせてしまったけれど、5年の月日でシャロン自身もあの頃よりは大人に近づいている。
止まってしまった2人の時計の針をまた動かすのなら、それは今日しかない。
「今日はオーケに、オレの純潔を捧げる覚悟で来たんだ。」
静かにシャロンが口にした一言を耳にしたオーケが振り向く。
動きがまるでスローモーションのようにゆっくりに見えた。
彼の目を見据えながら、頭の中に用意していた慣れない言葉を頑張って紡ぎ出す。
「......あたしを、貰ってください。」