Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship , Jail
Sargasso System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
27 December 3151
「第3回トヤーちゃんの余生を考える会議〜。」
やたらと明るい老人の声が、独房の廊下に響く。
イェ〜イという若い女子達の歓声と拍手が続き、薄暗い部屋の中で沈み込みそうなテンションは逆に一気に高まった。
「そんなわけで、あと4日後にはツォンシャンの天底に到着するってぇわけよ。」
若い女子に囲まれて上機嫌なオスキャルが議事を進行する。
なぜ、開催場所がここになったのかはわからない。
隣の房ではいけなかったのだろうか?と、エミリーヤは嘆息する。
「え?ひょっとしてズハイに寄れるの?」
すでに何日間も、狭い艦内で過ごしている女子達は、外の空気が吸えて身体を伸ばせることを期待したようだ。
だが、円陣の真ん中を陣取るオスキャルは首を振る。
「ツォンシャンは第一惑星まで片道4日半かかるんだよなぁ。往復するにはちと時間が足らなくてよ。」
「ええぇ、新しい下着買いたかったなぁ。」
悲しそうに服の上から手で両胸を持ち上げるトヤーにサチコが同意した。
「そうですね、私もオスクが喜びそうなモノを見繕いたかったです。」
持ち上げるほどの豊かさがない彼女は胸の上に手を添えることしかできない。
「こんなことになるんだったら、オレもなんか色っぽいやつ買っておけば良かったな。」
シャロンが二人の様子を見て口を尖らせた。
そういう彼女も、ここ2日間は黄色い整備服の下にレースの付いた下着を忍ばせている。
「なぁ、オーケはどんなのが良い?」
シャロンが首を傾げて、目を白黒させ続けているパートナーの意見を求めた。
まだ、何が起こっているのか把握できていないのだろう。
配膳役の彼女との交わりの直後を狙った、トヤーの仕返しのショックが大きかったのかもしれない。
「彼は昨日のあなたの白い下着を大層褒めていたから、似たような線で攻めるのが良いわ。」
オスキャルが入れた紅茶を口にしながら、呆けている隣人の代わりにエミリーヤが答えた。
「彼が外しやすいように、留め具の形が単純なものを選ぶと良いわ。もしも、もたつくのが好みなのだったら、金具は複雑なものではなく小さいものを選びなさい。」
「ヤッヴァ、超分析されてるんですけど。ウケる。」
「オスク、私たちもたまには営みの場所を独房とかに変えてみるのはどうかしら?」
年上の経験値を見せつけたつもりだったが、その助言にトヤーが笑い転げる。
一方のサチコは、新たな境地へと足を伸ばそうとオスキャルに相談を持ち掛けていた。
パートナーとの関係を進展させるためならば、誰の助言にでも耳を傾けようとする。
そんな少女たちの、営みへの勤勉さに、エミリーヤは恐ろしさすら感じた。
「その様子だと心配する要素なしってとこか。」
恋人の頭を撫でて宥めながら、艦長が確かめるようにシャロンとオーケの方に視線を向ける。こっそりと、もう片方の手を身を寄せているサチコの服の裾の中に忍ばせたのを、エミリーヤは見逃さない。
サチコがそれに抵抗を見せたのはほんのひと素振りだけで、すぐに目を蕩けさせながら、服の両手の袖で自分の口を抑えた。
きっかけを作ってくれた恩人達を前で、オーケとシャロンは恥ずかしがるように何も答えない。
お互いの指を絡ませ合う彼女達は、今にも口づけでも交わしそうなほどに熱い視線で繋がっている。
オスキャルはやれやれと口にしながら、チラリとトヤーを伺う。
老人の視線に気がついた彼女は、すぐに両手でVサインを作って返す。
破滅的な結末を迎えようとしている整備班長に、突然救いの手を差し伸べた天使の正体をエミリーヤ達は知っている。
まだ、自身の命の危機は去っていないのにも関わらず、その天使は恩を返すためにオスキャルに献策したのだ。
変質者という評価を色恋の噂で上書きした上に、彼の独房へトヤーが突撃仕返したという噂が広まれば、彼への悪い評価は完全に掻き消えるだろう。
お役目を終える頃には、彼は羨まれる側にいるに違いない。
「そういえばさ、あたしの手術だけど、ツォンシャンにいるうちはまだ検査だって。ブルーホール星系かゴートパス星系の天頂でやるってさ。」
思い出したかのように、トヤーが自身の予定を告げる。
「じゃあ、まだ2、3週間は絶対にゾリグ様とラブラブ出来ますね。」
「手術が終わったらワガママが通り難くなりますから、色々と今のうちですよ。」
未来への不安よりも、今を大事にしようというのが、彼女の強い意思だ。
ペトロワとエミリーヤの助言に、トヤーは頷きを返す。
2組のカップルの様子を目にして、彼女も落ち着かなくなってきたのだろう。
自分の恋人の元に帰りたそうに、そわそわと腰を揺らしている。
本当になぜ、ここが今日の女子会の会場になったのだろうか?
これも、あの年若い娘の策謀なのだとしたら、その行く末を見てみたい。
エミリーヤは一人、今後どうすべきかを考え込んだ。