Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
K-1C Dropshuttle , Airlock B
Zhongshan System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
1 January 3152
『スリーパーから連絡があった。相手はこちらの正体に気がついている。』
通信機の向こうから、指揮役の声が聞こえる。
『だが、ジャンプシップの跳躍直後に歩兵で移乗攻撃を仕掛けた例は古今存在しない。』
ジャンプ直後の航宙船は船体に強力な静電気が帯電しているために、これを放電し尽くすまでは計器の異常や兵装の使用不能などが発生するのだ。
どんなに全身が絶縁体に包まれていても、船の表面に居ようものなら、運が悪ければ一瞬で丸焦げになる。
古今、例が存在しない。というよりはただのレアケース。
状況的に見れば、秘密作戦として扱われる内容。
公表されていないだけで、誰でも思いつきそうな内容だった。
『作戦開始3分前、各分隊待機せよ。』
指揮官の演説を遮って、各分隊に時間の到来を通信士が告げる。
分隊の兵士達が次々と手元の装備の最後の点検を終えていく。
『諸君、歴史を作ってきたまえ。』
演説好きの指揮官の無駄話を無視するかのように、エアロックの中を照らす灯りが赤に変わる。
「スーツの密閉を確認しろ。」
分隊に短く指示を出すと自分でもスーツの点検をする。
──クソ指揮官め。
演説は時と場合を選ぶべきだ。
出撃前の緊張が高まり、エアロック内の空気がひんやりとしたものに変わっていく。
彼の長いお言葉は、その空気を乱すものだった。
誰もわざわざ、上司にそれを指摘したりはしない。
ただ、もし彼が降下船の艦橋ではなく、目の前にいたのなら。
誰かが我慢できずに手元の武器の引き金を引いていたかもしれなかった。
いつもならば、通信士の警告があってから、エアロックの減圧が始まる。
狭いエアロックの中でイラつきを隠していた隊員たちは、すぐ違和感を覚えた。
装備の点検が終わって数分が経っても、作戦開始のカウンドダウンも無ければ、減圧も始まらない。
「オペレーター、状況は?」
分隊長が通信機に話しかけても、応答はなかった。
「アルファ、チャーリー、デルタ報告せよ。」
仲間からの応答もない。
船外で荒れ狂う静電気によるトラブル。
一番あり得るのはその可能性だっだ。
しかし、それでも同じ艦内であれば、脚を動かすという伝達手段がある。
分隊長はそれもすらもないことが、気に入らなかった。
「分隊長、マズいことになっているかもしれません。」
「何が起こってる。」
しゃがみこんで、艦内の聴音していた隊員が報告を寄こす。
「我々は恐らく...もう襲撃を行う側ではありません。」
想像を超えた部下の報告に、分隊長は笑うか絶句するしかなかった。