Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
K-1C Dropshuttle , Bridge
Zhongshan System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
1 January 3152
齢50まで戦士として降下船の船長を務めた。
齢50を越えて船は取り上げられてしまったが、この星系の基地で気圏戦闘機のパイロットとして再び宇宙を飛ぶ機会を得た。
砲兵の真似事をする機会も得たかと思えば、今日の襲撃だ。
ナランは左手の熱戦銃をホルスターに戻す。
デズグラやソラーマという立場も案外良いものかもしれない。
そんな勘違いをしそうになるほど、今の環境は初老のパイロットにとって刺激のあるものだった。
「艦橋は制圧しました。」
通信機から伸びたプラグを艦橋のジャックに挿し込むとナランは報告した。
『そう、次はエアロックの制圧ね。侵入に使ったAは潰したから、BとDを潰して。』
「チャーリーは放置でいいのですか?」
有線越しの指示に質問を返す。
『酸欠で死んだ敵の死体に興味があるならどうぞ。一人は接続してきたから脳を焼いたけど、他の9人は夢に出てきそうな表情のはずよ。』
「なるほど、やめておきます。」
納得の説明に肩をすくめた。
相変わらずの容赦のなさに背筋が震える。
数日前まで、喪失に震えて泣き叫んで女性だったとは思えない。
『エアロックの前に付いたら教えて。通信ジャックのあるパネルはエアロックの扉の左側よ。』
「了解しました。」
通信を終えると同時に、艦橋の中央から肉が断たれて、骨が砕かれる音が3度続けて聞こえる。
指揮官と通信士と操舵士だったのだろう。
驚きと困惑の表情のままに既に絶命していたのだが、今の彼らの身体からはその頭が失われていた。
彼らの処刑を終えた大男が片手を振るって斧頭に残った赤黒い液体を散らす。
彼がその液体が自分にも降りかかっているのを気にする様子はない。何かの芸術作品のように翡翠色のパイロットスーツに赤い飛沫のようなものが付着する。
黒い帯のような布に覆われた顔がヘルメットのバイザーの下から覗いていた。
表情は隠れて見えないが、それは些細なことのように思える。
ナランも彼の鏡のような姿をしているので、目端の利く人間でなければ同じ人間のように見えるだろう。
違いがあるとすれば、腰に下がっている拳銃だ。
熱戦銃ではない。装弾数が3発の大型拳銃。
姿を隠す気が本当にあるのか、と彼に問う愚は犯さない。
黙って艦橋を出ようとする彼の背に続く。
これでも、彼は正体を隠しているつもりなのだ。