※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

186 / 281
Ep.21_04

Union class Dropship , Bay3

Zhongshan System, Nadir JumpPoint

Jade Falcon

6 January 3152

 

 何本ものパイプをタコのように床に這わせたトレーラー。太いケーブルを束ねた管のどれがどこに繋がっているのか、シタには見当が付かない。

 機械のことは専門では無いし、そもそも指揮通信車などというものにご縁があるとは、彼女は想像もしていなかった。

 暗闇の中で薄明かりに照らされていると、つい医者の役目を忘れそうになるが、今日ここに居るのは逞ましい野獣に身を捧げるためではない。

「データベース立ち上がりました。いつでも検索始められます。」

「ようし、じゃあ僕らのクランケのことを調べてみよう。」

 オチルの呼びかけに応えた男こそが、シタが呼んだ専門家だった。

 本来の名、アルタンエルデネとは誰も呼ばない。代わりのDr.マリオという呼び名はDr.マリオネットを略したものだ。

 警察病院に勤める医者としては、あまりに仰々しい名前だが、そこに籍を置く前からそう呼ばれていると知れば、その先を尋ねるのは御法度だと分かる。

 腕が良いだけではなく、頭の回り方も他の医者とは違った。

 シタが書いたカルテを読んだだけで、指揮通信車のデータベースから氏族の過去のパイロットの情報を探そう。と彼は提案する。

 EIインプラントは氏族の軍用の技術で、手術に必要な知識を得ることがそもそも難しかった。

 シタは、トヤーの手術歴の情報が、まさか自分の足元にあるとは思いもしない。

 だが、マリオはすぐにその可能性を閃いた。

「5-8年前、まだ訓練の段階でEIの手術をうけている女の子。そうだね、ロシャークの遺伝子で絞り込んで。」

 彼は今やオペレーターの椅子に手を載せて、細かな検索の条件までを指示している。

「7年前に14人の訓練生に手術を行った訓練所があります。ただ、5人が手術で、7人が手術後2年以内に死んでます。残った女性2人も7人が死んだ直後に破棄されていますが、どう破棄したのかは記録上はわかりません。」

 胸糞の悪いデータを、オチルが読み上げた。

 情報を聞いただけで、氏族の実験に使われた訓練生達が、人体実験の失敗で命を落としたというシナリオが頭に思い浮かぶ。

「シタ君は随分とシビアな世界で生きてきたんだな。」

 シタの想像を聞いたマリオは率直に感想を述べた。

「だが、推測というのは事実に基づいて行われるべきだ。情報は多ければ多いほど、真実に近づく。」

 忠告なのか説教なのか、まるで格言のような言葉を男は口にする。

 彼はオチルの席の横から指を割り込ませて、自らの手でデータベースを操作しはじめた。

「出来事を読んでくれたまえ。」

「えーと?5年前の訓練所襲撃事件ですか?警備と訓練生が反撃したけど、結構多くの資源が奪われたやつですね。襲撃者は不明だけど...あれ?ここ、EIの手術してたさっきの施設ですね。」

「そうなのだよ。」

 モニターに表示された過去の事件を、オチルは彼に指示されるままに読み上げて、首を傾げる。

 ポンと手を叩くと、マリオは改めてシタに目を向けた。

 人体実験と訓練施設の襲撃事件、シタには2つの情報が繋がるようには思えない。

「どういうことですか?」

「可能性がいくつかに絞られる。」

 顔を顰めたシタに、マリオは指を2本立てて見せる。

「トヤー君の5年前に起こった出来事だ。トヤー君は襲撃者に抵抗して戦った訓練生の1人か、もしくは襲撃者に奪われた資源の1人かのどっちかだ。」

 トヤーの所属していた海賊が襲撃者ならば、彼女は資源として奪われた訓練生だということだろうか?トヤーが抵抗して戦ったのならば、生き残って攫われたという筋書きもあり得る。

 シタはもう一度、モニターに映し出されていた情報と、自分がカルテに走り書いた情報を見比べた。

「あと、キミの調べたカルテと組み合わせるともう一つわかることがある。」

 マリオは、人差し指を振り回しながら、その場を歩き回っている。

 彼女が廃棄された日付には、訓練所が襲撃された後の日付が書かれていた。

「トヤー君は5年前以前の記憶が無いんだってね?」

 シタはその問いかけに頷く。

 トヤーの覚えている範囲では、彼女はずっと海賊に居たことになっている。

 だが、その覚えている範囲は僅かに4〜5年間程度で、それ以前の彼女のことは誰にもわからない。

「じゃあ、確定だ。彼女に記憶が無い理由が僕にはわかる。」

 得意気なマリオの次の言葉をシタは静かに待った。

 もう、彼の口から真っ当な文句が出てくるはずがない。

「この時だろうね、彼女はインプラントの反作用で、既に一度発狂している。仲間の7人が死んだのも、戦死でなければきっと同じ理由だ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。