Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship , Bridge
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
ジャンプポイントの周囲での戦闘行為は、そこの星系へ喧嘩を売るのと同義だ。
星系の玄関口の安全を脅かせば、場合によっては星系に住まう住民の生命に関わる行為になる。
だが、今回は事情が違った。
こんな任務にオスキャル達が付き合うのには理由があった。
船尾に巨大な帆を展開して、次のジャンプのための再充電をする航宙船は、全くの無防備になる。
航宙船の長であるカルディネは、先日のK-1C降下船の襲撃の件以降、同様の事故が起こることを警戒していた。
彼らは結局、前回の襲撃者の正体を掴めないまま、ツォンシャン星系を離れることになっている。
オデッセイ級と接続ベイで繋がっている降下船の中で、最も重武装のユニオン級は有事に大きな役割を果たせた。
他の船と比較して大型で容量の多いこの船の、圧倒的な強みに人数と人材がある。
2つの船のシステムとリンクさせることで、双方の電探の情報を一ヶ所に集約ができた。
更にVisigothを展開して、気圏戦闘機隊を周囲の哨戒に当てる。
ツォンシャン星系でシフと彼女の乗機の補充を受けた彼らは、再び4機を運用できるようになっていた。
警戒網が大きく張られれば、その中での動きは全てオスキャル達の手元に入ってくる。
唯一、事件の真相を知るオスキャル達には、同じ襲撃を繰り返す意思はない。
彼らはこの茶番に付き合うフリをしながら、あるかないかわからないSeaFox氏族の報復に備えていた。
『8番機、離床します。』
「了解、続けて2番機を発着口へ」
小型機を連続して発艦させている発着ベイから次々と報告が上がる。
オスキャルは艦長席で艦橋のモニターからそれを見守りながら、指示を出す。
この宙域では、彼らには重大な護衛対象があった。
「オペの開始まで、あと1時間。6時間の術式の間、船に一切誰も近づけるな。各砲座はいつでも撃てるように構えとけ。」
降下船も航宙船も、数時間の間はジェネレーターを停止させて、バッテリーだけで運行する。
あらゆる振動の要因をできうる限り排して、1人の少女の手術に備えることになっていた。
「ドライブ停止、ドライブ停止」
「生命維持装置と医療区画の電力を最優先しろ。」
オペレーター席からの報告に、静かに指示を返す。
トヤーのインプラント摘出手術は、あらゆる意味でこの船に乗る全員が注目する一大イベントになる。
これが、誰の仕掛けた演出か、オスキャル達が知るはずもない。
整備士達も、戦士達も皆、同じ目標に向けて動き始めている。
出自の各々違う船員たちの意識と目的が、一人の偶像に集中していた。
手術の成否に関わらず、誰でもない男は既に目的を果たしている。
船の乗員の一体化は、艦長であるオスキャルにも利益がある。
だが、彼はこの策謀には一枚も噛んでいない。
だから今回は純粋に、胸の大きな少女の無事を、自分の椅子で祈ることにしていた。