Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Visigoth I51GAW22
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
『ヨウコウハアメノイワトニカクレタ』
通信機から流れる奇怪な言葉にドルマーは顔を顰めた。
「受信する側が、聞き取ることすら困難な符牒にする意味がわからないわ。」
『これって、どういう意味なんすか?』
『陽光が隠れたそうです。』
『ナラン...説明したら、符牒の意味が無いだろうが。』
不思議そうに問うシフに、ナランが気を遣って答えを返すが、すぐに彼はオスキャルに厳しい注意を受ける。
『対艦戦闘を伴うような有事が、本当にあり得るならば、4番機と5番機の不在はあり得ません。』
アレフの他人事のような声色が、ドルマー達の疑問を遮る。
降下船の艦橋で通信席に座る彼は、この件になぜか協力的だ。
彼によれば一番ありそうな妨害は、ツォンシャンで彼らが受けた襲撃の意趣返し。
バトルアーマーを使った移乗攻撃が一番実現性が高いのだという。
『粘着質な人達みたいですから、執念と執着があるんです。』
ツォンシャンの天底に駐留していた、SeaFox氏族の艦船が動くことは無い。
理由は単純で、船の回航が到底間に合わないからだ。
SeaFox氏族も一枚岩ではない。
ドルジの部隊に対しても、彼らの中では様々な意見があるのだという。
彼らをアリイナに呼び込んで、戦力として利用したい勢力。アンネをドルジに奪われ、面目を潰された勢力。
この2つはそれぞれ、異なる長に率いられている。
アリイナの勢力圏に降下船が入ってしまえば、ツォンシャンにいたSeaFox氏族はドルジ達に手出しがしにくくなるらしい。
『ちなみに僕は、その2つのうちのどちらでも無いんですけどね。』
「えぇぇ...」
なんとかアレフの話を理解できていたドルマーは、悲しい声をあげた。
『要するに、ツォンシャンに駐留していたフリゲートの指揮官が博打屋でなければ、飛行隊の皆さんが飛んでいるのはまったくの無駄です。』
あっけらかんと笑う彼のホロは、図々しい笑みを浮かべていた。
それでも、ジャンプポイントから1日の距離に現れる可能性も含めて、警戒するに越したことはない。
だから、動きの取れない降下船の代わりに、飛行隊は広い宙域を哨戒しなければならないのだ。
『ちゃんと今まで皆さんのお役に立ってるんですから、その分くらいは信じて欲しいですよ。』
自分でも己が疑わしい存在だという自覚はあるのだろう。
だが、アレフは保身のために、ドルマー達に何かの利益をチラつかせたりはしなかった。
『目的のわからん奴が一番扱いにくいんだけどな。だが、そこは致し方あるまい。』
彼と同じ場所にいるオスキャルの声が、通信機越しに聞こえる。
老艦長はいつも通り、艦橋の中央にある席に座っていた。
気がついたら、帰還する船が無くなっている。
そんなことにならなければ、ドルマーはひとまず現状に文句はない。
でも、だからと言っていつ牙を剥くかわからない人間と、同じ部屋で2人きりになる。
そんな胆力は、彼女にはなかった。