Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ep.22_01
Union class Dropship , Bridge
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
『2番機より、赤狸へ。赤狸よりアンチラジアル方向、右34度上27度の方向、およそ60万マイルの距離にある小惑星の影に降下船2隻が潜伏している。』
――誰が、天ぷらうどんだ。
ドルマーからの通信を受けて、心の中でだけ言い返す。
オスキャルはモニターで指定された方向を確認する。相手の降下船が火を落としてるとすれば、ちょうどパイレーツポイントと呼ばれる辺りの宙域だ。
Visigothに積んだ走査器がギリギリ見つけられるような距離の金属反応を彼女は見逃さなかった。
「よく見つけたなぁ。」
ほとんど呆れたような声を出すアレフに心の中で同意する。
「過剰に刺激するな、ただの流れの海賊だろう。」
Visigothから送られてきたセンサー情報を降下船のコンピューターにかけても、機械は相手を生きた船だとは認識しない。
だが、死んだ船にしては船体の金属が冷え切っていなかった。サーマル情報がまだ船内は人が生きていられる場所であることを示している。
『ゴメン、手遅れかも。目標の熱量上昇中。』
通信の返事と同時に送られてくる情報にも変化が表れた。青黒かった表示が一気に黄緑色に芽吹く。
もう、相手は死んだフリを止めてしまった。
オスキャルは時計を確かめる。
「8時間後に機関再始動。その後で5番機も発艦させる。機関室とベイは準備を始めろ。」
ここまでは最低限だ。
「手術室の様子はどうか?」
手術室内を呼び出す手段はない。こういう時のために、有線の通信機をサチコに持たせてあった。
『...インプラントを停止した後に心臓が一度止まったそうです。それっきり、誰も出てきません。』
震える声が通信機の向こう側から返ってくる。本人は抑えているつもりなのかもしれない。だが、オスキャルには彼女が泣き出しそうなほどに不安に襲われているのがすぐにわかった。
術式の開始から、既に4時間が経過している。早ければ閉創が始まってても良い時間だったが、世の中はそう上手くはいかないようだ。
「わかった。何かわかったら連絡をするように。」
相手の船の速度によっては、残酷な判断をしなければならないこともあるかもしれない。
肘掛けの先を指でトントンと無意味に叩いた。
モニターに映る2つの船影の進路を示す数値が徐々に望ましくない数字に迫っている。
オスキャルは通信チャネルを開こうと手元のパネルを操作したが、すぐに止めた。
まだ、その判断は早い。まだあと数時間は待てるはずだった。