Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship , Bay2
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
――ふふん、オレもこれを付けてみたかったんだ。
左右の拳をぶつけると、ガツンと金属音が響く。
後を追ってくる2つの気配を背で感じながら、シャロンはグイグイと進む。
両腕を包む機械の出力を最大にまで上げて、行く手を阻む隔壁に手をかけた。
「いくぞぉ!」
指先を扉の隙間にガッシリと引っかけて、一気に左右に拡げる。
メキメキと音を立てて、固く閉じていた隔壁扉が火花を吹きながら縦に裂けていく。
「3名様、ご来場ぅ。」
金属の板が中に向けて倒れても、重力の無い船内では金属と金属のぶつかる音が響くだけで、迫力を欠けた。
金髪の怪力娘は両腕を弧を描くように回してポーズを決めてから、格納庫に足を踏み入れる。
「やめて、仲間だと思われたくありません。」
後を追って、するっと庫内に入り込んできたサチコがシャロンの言葉を首を振って否定した。
その後で言葉を失ったゾリグが呆然としている。
正面に目を戻してみれば、イヤーセットを摘んだまま呆気にとられたような表情のオーケが彼女の姿を見つめていた。
シャロンは2人きりでない時に、こんなにも彼にまじまじと見つめられた経験がない。
少し恥ずかしさを感じて、シャロンは嬉しさに胸を躍らせた。
『2番格納庫で警報が出てるぞ、何があった?』
通信機から艦長の怒気を感じるが、そんなものには負けていられない。
「誘導弾の装着は、スペースマッスルガールに全てお任せよ。」
シャロンは身を包んでいる船外活動服の下で胸を張り、金属製の親指で船窓の外に広がる虚空を指差す。
『ん?ん〜?』
せっかくの名乗りにも関わらず、通信機の向こうから聞こえるオスキャルの声は困惑に満ちていた。
『あー、とりあえずなんだ...オーケ、お前減棒6ヶ月な。』
「なぜッ!?」
ヘルメット越しにオーケの抗議の声が聞こえる。
それは意に介さず、オスキャルは続けてシャロンとサチコに声をかけた。
『シャロン、色々ある中スマンがサチコと力を合わせて装塡作業と5番機の支度にかかってくれ。2人ともよく来てくれた。』
「有線の通信機はペティに任せてあります。トヤーちゃんについては彼女からお聞きになってください。」
仕事モードのサチコは、恋人の言葉にも事務的な返事しか返さない。
シャロンは愛の込められた言葉を求めて、期待の眼差しを自分の恋人に向ける。
だが、肝心のオーケはまだ何かのショックから立ち直っていなかった。
「ようし、やるわよさっちー。」
仕方なく気を取り直して、再び両腕を構える。
黒光りする指が思い通りに動くのを確かめながら、クレートを求めてシャロンは弾薬庫に向けて壁を蹴った。