Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Aurora class Dropship , Bay1
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
ヌルはオーロラ級の船内の一室で目覚めた。
エノリの介抱で目を覚ますと、同じ室内にマイがいることに気が付く。
7人の中で最も柔軟な肉体をしている彼女は隔壁が降りて行き来の出来なくなった左舷側の様子を見るために艦内の通気口を潜ったらしい。
左舷側の3番ベイで、エリスとデメトリウスの遺体を見たという話を聞いてヌルは暗くなりそうな気持ちを心の中に抑え込んだ。
マイの肩を叩いて彼女の生存を喜んでみせる。
彼らのいる船室は左舷1番ベイの最上階にある一室だ。
数人のエレメンタルが見張りにはついていたが、ヌル達がその気になればいつでも彼らの監視の目をすり抜けてここから脱走できる気がしていた。
そんな考えを打ち明けるとマイはヌルの提案に首を振る。
「あいつらは、エリスとデメトリウスの遺体を回収すると約束してくれた。」
生死は別として、もしも7人がまた全員集まれるのなら、この部屋でそれを待ちたい。
マイは疲れた顔でそう告げる。
ヌルは考えこむ。
4番ベイで対空戦闘の前線に立っていたマークの生存は絶望的だ。
信じられないことに、敵のエレメンタルがこの船に乗り込んできたのは降下船同士がぶつかり合った瞬間。
ユニオン級の右舷がオーロラ級の右舷を切り裂いた時に飛び乗って来たらしい。
衝撃を生き延びたオーロラ級の上面の兵装は取り付いたバトルアーマーと気圏戦闘機によって徹底的に破壊された。
その後の艦内の制圧戦はその時の抵抗に比べればおとなしい。
無駄な抵抗。と言ってもまるで過言ではなかった。
「エレナはきっと生きているね。」
エノリがぼそっとつぶやく。
彼女は右舷側のベイにいたはずで、生存を確信できる要素はどこにもなかった。
そうは言っても、ヌルだって同じ願いを持っている。
余計なことを口に出すのは止めて、ヌルはエノリのすぐ隣に座りこんだ。
しばらくの沈黙の後、船室の扉が開く。
金色の腕甲を見るだけで、ヌルの本能が震え上がった。
慌てて、入り口から目を逸らす。
彼はエレナと一緒だった。
エレナッ!と声をかけようとして、ヌルは彼女の異常に気がつく。
巨大な手に隠れていて見えていなかったが、彼女の着ているパイロットスーツは、前の部分が無惨に引き裂かれていた。
どこか彼女自身の顔も赤くて、上気したような表情を浮かべたまま、チラチラと横目で隣に立つ男の様子を気にしている。
一番最初に彼女に駆け寄ったのはマイだった。
「エレナ、大丈夫?」
背中を支えられて、エレナは紅潮した表情を隠すかのように両手の拳で口元を覆う。
「色んなものの下敷きになって、もうダメかと思ってたんだけど...その、ヘイゼン様に色々とお助け頂きました。」
何かを惜しむかのようにチラッとだけ飛び出た舌が、艶かしくさっと彼女の唇を濡らした。
7人のうち、最年少のマイはエレナのその様子に何か不気味なものを見るかのような表情をする。
「そ、そう、とにかく無事なら良かったわ。」
腕甲男が出ていった扉から目を離す様子のないエレナから目を離して、ヌルはマイとエノリに訊ねた。
「この後ってボクらはどうなるのかな。」
「さあね。いいとこボンズマン、悪ければ処刑でしょ?」
マイは首を傾げて応える。
どんなに生きる努力をしたとしても捕虜の扱いになるのは間違いがない。
氏族メックではなく、ただの戦闘メックに乗せられて戦場で戦えるのならいい方だ。
捕虜となれば、戦士として扱われる望みはない。
「もしも、望みが叶うのなら...」
エレナの声が天井を眺める3人の耳に入る。
小さな声だったが、彼女ははっきりとした意思で彼女の望みを口にする。
「エレナは、ヘイゼン様と共に在りたいと思います。」
ヌルにはその言葉がいったい何を意味するのか、まるで理解ができなかった。