Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship , Bay2
BlueHole System, Nadir JumpPoint
Jade Falcon
8 January 3152
「あげないっすよ?」
シフは期待させては悪いと思ったので、先に断りを入れた。
捕虜に勝手に何かをあげるのは立派な軍規違反である。
2人の女性の目がシフの啜るたびに麺の動きに合わせて下から上に向けて何度も往復していた。
――即席の米麺の、何が珍しいんだかっすねぇ?
お湯を注いで数分待つだけで食べれるようになる、携帯食の代表のような存在で珍しくもなんともない。
ツォンシャンからの補給品として、同じようなものを山のようにコンテナに詰め込んで来ていた。
即席麺の元祖たる一杯は、そこには含まれていない。
同じ製品は、この辺境では生産されておらず、テラに行ってもそれが手に入るかどうかわからなかった。
――偽物のコピー品でも、うまいものはうまいっす。
こんなものはシフのような血名を持たない戦士にでも配給される。
本人達は望まないだろうけど、ドルマーやゾリグであれば、もっと良いものを食べれるはずだった。
例えば、パウチに入っている、温熱機で温めるような食事は、もっと良い食事に含まれる。
トロミの濃い汁を音を立てて吸い込むと、長い金髪の方の捕虜が喉の奥から、悲しそうな呻きを出した。
ムキィ。とシフは怒りの声を上げる。
「食べにくいから、こっちを見ないで欲しいっす。」
金属の指で椀を持つのは意外と難しい。肩の筋肉の動きに反応して、油断をしているとたまにシフが意図していない、とんでもない動きをするのだ。
感情を昂らせて、うっかりと汁を撒き散らかさないように、全ての神経を左の肩に集中していなければならない。
それを横から積極的に乱すような行為はしないで欲しかった。
「そもそも、2人ともなんで捕虜なのに手錠もしないでここにいるっすか?」
シフは至極当然の疑問を口にする。
目の前の2人は不満気な顔を浮かべながら彼女の問いに答えた。
「知らないよ。なんか、パイロットのオッサンにここで待てって言われたからここにいるんだよ。」
「独房はもう満室なんですって。」
お前らが悪い。と言わんばかりの口調で、口を揃えられるとシフは何も言い返せない。
そもそも、なぜわざわざ捕虜を獲ったのかすら彼女は聞いていなかった。
「なんか、申し訳ないっす。」
この船には、何人もの戦士が乗っているはずなのに、その場には彼女しかいない。
仕方がなく、シフは2人に素直に謝ることにした。