Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ammo Dump Apron
Zhongshan System,Zuhai
Jade Falcon
14 February 3151
滑走路から離れた待機所、他の機体が帰投したのを見届けた四番機が地上に戻り、エンジン音を引きずりながらゆっくりと駐機した。
全機帰投の報告を終えるとユルはパイロット達の様子に目を向けた。
7番機。シフが機体を飛び降りると、そのままツェレンの胸に突っ込むように飛び込んだ。
「ツェレンさんッ……!」
息を荒げ、シフは叫んだ。その声に皆が驚き振り向く。
「なんで……どうして……あたし、ただ真っ直ぐ飛んで、撃っただけなんです……!」
言葉が詰まり、シフの目元が赤くなる。溢れ出る涙が2人のパイロットスーツを濡らす。
だが、それでも彼女は叫んだ。
「ミサイルの誘導は4番機、脱出したメックへの追撃は2番機と5番機!結局、全部みんなの功績で……私、何もしてないじゃないですか!」
喉の奥で押し殺していたものが、破裂するように噴き出す。シフの悲痛な泣き声が辺りにこだまする。
ユルは一歩引いた場所から、その一部始終を見ていた。
成績上、彼女には大きな問題はない。
だが、彼女の中で「功」に対する焦りがある。
その焦りがあるが故に先の作戦でドルマーは7番機を随伴機に指名しなかった。
そしていま、その不満が爆発している。
ツェレンはしばらく驚いたように目を見開いていたが、すぐに穏やかにシフの肩を抱き寄せた。
「悔しかったのね」
その一言で、シフの嗚咽が再び大きくなる。制服に染み込んでいくほどの泣き声だった。
その背中を見つめながら、ユルはゆっくりと息を吐いた。
この基地には多くの未熟者がいる。経験不足、技術不足、それらは全て焦りを生み出す。焦りは結果を生み出すこともあるが、同時に命を落とす要因にもなる。
若手が命を落とすことないようにするのが、ユルの仕事だった。
ツェレンが、泣き崩れたシフを駐機場の隅へと連れてくる。
その後ろ姿に目をやりながら、ユルはため息をついた。
この場はツェレンに頼むしか無かった。
ツェレンがシフの号泣をしばらく黙って受け止める。反論も慰めもなく、ただ静かにシフの髪を背中を撫で続けた。
「今日はあなたは作戦通り、飛んだでしょう?」
少し落ち着いたシフを胸に抱いたまま、ツェレンが彼女をあやすように口を開いた。
シフは、唇を噛んだままだ。頭では理解はしていても胸のどこかが悔しさが晴れないのだろう。
「でも、ツェレンさん。私は戦闘機乗りです。」
声は震えていた。
ツェレンが少しだけ困ったように笑った。
そして、いつもの穏やかな微笑でシフに提案する。
「じゃあ、こうしましょうか」
言葉を一拍置いてから、彼女ははっきりと続けた。
「訓練で私を“撃墜”出来たら、前に出る許可をあげる。」
黙って距離を開けて聞いていたユルは目を見開いた。
間近でそれを聞いたシフも驚いた顔をしている。
「……はい!やってみせます!」
やる気に満ちた表情のシフを見てツェレンが笑う。姉のような笑顔だった。
「楽しみにしてるわ。」
涙を拭って、奮起するシフをツェレンが見送る。
シフの姿が見えなくなると、ツェレンはユルに小さく目配せをした。
ため息と共に、ユルはその無言の問いに肯くしかなかった。
認めるとも。
“首狩兎”ドルマーですら未達の条件を7番機が達成したのなら。