※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

25 / 281
EP.03_10

Ammo Dump Command Office

Zhongshan System, Zuhai

Jade Falcon

10 March 3151

 

 かつて司令官室と呼ばれていた部屋の扉を叩くと、簡潔な返事が帰ってきた。

「入れ」

 ユルは手に持ったパッドを軽く握り直しながらドアを開ける。

 中にはコボルが一人。

「時間を取らせる。少しだけいいか」

 ユルはコボルの真向かいのソファに身を預ける。

「構わん。どうせ数字しか相手にしていないところだった。」

 コボルが手にしていた帳簿を床に放り出す。

 

「7番機、シフの機体の装備パターンをCにしたい。ツェレンからの提案だ。」

「賛成しかねる」

 ユルの提案をコボルは却下した。

「装備を長射程化して、突っ込み癖を抑える算段だろうが、あの性格で機体の排熱と機動をコントロールするのは無理だ。」

 機体の排熱制御の失敗はパワーダウンに繋がる。相手と格闘戦をしたがる彼女にC装備が御せるかどうかは確かに怪しい。

 ユルもそれは否定できなかった。

「それに、彼女専用に C装備を維持するための物資を確保できるほど、基地は裕福ではない。」

 先に性格のせいにして、最後に予算の話を持ってくるあたり、コボルらしい言い回しだった。

 ユルは黙ってうなずいた。コボルの言葉は冷たいが、事実だった。

 ユルのパッドの上にはシフの飛行ログ、そしてツェレンのコメントが表示されていた。そこにはコボルと同じ懸念が示されていた。

「……わかった」

 二人の間に短い沈黙が落ちた。

「海賊退治は次の一戦で一区切りだ。母船のコルベットを沈めれば、全ての船が宇宙の藻屑だ。ツェレンにはそれまで撃墜されないように頑張ってもらってくれ。」

 そうすれば、シフを再訓練、再編成する時間もできる。

「隊の再編も視野に入れておくべきか?」

 ユルは問い返した。

 

 コボルはしばらく黙った後、口を開いた。

「……地球侵攻が、もうすぐ終わる。」

「そうか。」

 地球に行った戦士達が帰ってくるのなら、隊どころか基地が再編される可能性すらあった。

 

「つまり、あの考えなしが帰ってくるぞ。」

 色々な懸念を振り払うようにコボルが少し明るい声で言う。

「ツェレンが喜ぶな。」

 苦々しい顔をしながらユルは応じた。

 

——そうか、あいつが帰ってくるのか。

 

「ただ追いかけ回してたあいつとツェレンが恋仲に、恋人から夫に。大層な出世だ。」

「皿洗いから基地司令になった男が出世の話を?」

 コボルに言葉を返しながら、ユルは難しい顔をする。

 ユルも一介のパイロットから部隊長へと昇格していた。 

 それもこれもあいつの考えなしのおかげだ。

 あの夜の秘密を知るのは、当事者3人と、銃声を聞いて駆けつけたコボル。

 4人だけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。