Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Safdarjung Spaceport ,Union class Dropship , Sacred Realm
Alyina System, New Delhi
Alyina Mercantile League
2 February 3152
最初にエレナの映像を見た時に、まず心の中には嫉妬が生まれた。
地上から映された彼女の姿は、小さな光球にしか見えないほどに小さい。
雷鳴と雨音にほとんどが掻き消されていたが、マイはエレナの嬌声を確かに耳にする。
悲鳴ではない、愉悦に満ちた声。確かに彼と共にあると、自己の全てを肯定する喜悦に満ちた声。
それをただ、羨ましくと思う。
ニューデリーのメディアが放映しなかった映像は、更に苛烈だった。
マリオが雇った撮影スタッフの優秀さが、すぐにわかる。7つのカメラで捉えた2箇所の映像は、作為的な意思を持って繋ぎ合わされ、すぐに方々に拡散された。
音楽、甘やかな女の声、雨と雷の音、預言、雷で空に描かれた世界樹。
そのフイルムで切ない声を上げる女が自分ではない理由は分かっている。これは神話なのだ。
引き締まった肉体と、しなる長い脚、豊かなはずの胸だけでは、この映像は仕上がらない。
彼に選ばれるには、心をもっと養う必要があった。
柔肉の万力で締め付けて、彼と握り合わせた両手の指に力を込める。胡乱になっていく意識の先でも、感覚は研ぎ澄まされていく。
自分の汗が男の胸に、床に落ちる音すら聞こえる。
聖域の向こうの足音も、整備士達の話し声も全てを感じることができた。
──もっと、先がある。エレナはそこにいる。
たった一突きで、己の全てを崩される。
その境地を、マイは渇望していた。
身体の全ての力が抜けて、万力のように絞め付ることもままならず、ただエレナのように男の中で華開く。
拳の打ちつけ合いでは、決して至ることのできなかった昇仙への道。
それはまだ、マイの目の前に拓かれない。
──私では、頂に至れないのか...。
どんなに型が定まろうとも、中身が伴わなくてはそれはただの虚ろ。
腰の動きを中断させて、男の身体の上に自分の肢体を横たえる。
彼から受け取る精の力を真に扱えないのは、彼女自身の未熟が原因だ。
マイは己の至らなさに落胆する。
男の肌に頬を寄せて、小さく息を吐いた。
例え、彼女のため息の理由を知らなくても、抱き寄せ包む両腕は慰めになる。
ふと、自分の背後にエレナの気配を感じた。
油断して無防備に上を向けられていたマイの菊の花弁の中に、何か小さな卵のような形のものが押し込められる。
「何をするッ。」
叫ぼうとしたが、男の両の腕が邪魔をした。
更に身体の中に入り込んだ卵が、強く横向きの振動を始める。
マイの脳に電流が走った。脚の力は抜けて、全身の筋肉が弛緩するのを感じる。
──嘘だ、こんな時に。
混乱に対処できない焦りもかき消えて、マイの全ての意識が身体の内部に集中した。
そこでマイは初めて、自分の子宮の形を知る。巣を発った卵球が、既にそこへ向けての旅路にあることすら知覚できた。
身の危機すら忘れて、彼女の肢体が腰の動きを再開する。己の臍と男の臍、小綺麗に整えられた黒い茂みと繁茂した野生の原生林が擦れ合わさり小さく音を立てた。
「あっ、うっ、あっ...。」
呼吸に声が載り、さらに身体の震えがそこに合わさる。マイの頭の中には天の川が流れていた。全ての思考は、真っ白に光る星の奔流に埋め尽くされて、形を成さない。
無限の時が過ぎた後に、白い星々が逆流する流れに押し返される。より強い輝きを持つ、黄色を含んだ光を持った恒星の流れが、彼女の天の川の星々と入り混じった。
──エレナ...。
マイは、どうにか侵入者の名前を思い浮かべる。
先駆者が観ているのと同じ光景が彼女にも確かに視えた。
「これが、創世...。」
彼女の胎内に、大河の流れを遡る龍達の咆哮が響く。猛々しく螺旋を描く、彼らの目指すところはただ一つ。
滝の先で目当ての巨星を見つけると、何の小細工もなしに、次々にそれを包む薄膜に当て身を食らわせる。
やがて、その競争に勝利者が現れると、その星は光の波動を周囲に放つ。
その波は、信号となって神経を辿り、やがて脳にまで至る。
──私にも、武の頂が見える...。
マイにはその荒々しさを、茫然と迎え入れることしか出来なかった。