Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Camp Jaipur ,Landingpad
Alyina System, Noida
Alyina Mercantile League
5 February 3152
大きな宇宙港には、何基もの立派な発射台が並んでいる。
だが、世の中は設備の充実した港ばかりではない。固い平坦な地盤のことを発射台と呼んでいることも少なくない。
耐火コンクリートや、鉄鋼の構造物が併設されていればそれだけで星が付く。
この基地の発射台は耐火コンクリートと合金の発射台に、避雷塔、通信管制塔に作業用のクレーンまで付いている。
普通ならば、文句なしの、星5つの優良港だ。
しかし、その程度の設備では、艦長が望んだような船体のフルメンテナンスを行うのは不可能だった。
「工業地区だっていうから、少し期待したんだけどな。」
オーケはため息混じりにそう呟く。
CJF Factory Zone 4と呼ばれる氏族の移動式工場が、このアリイナ星系に移設されてから70年ほどが経過している。
それ以来、氏族の生産拠点としてこの工業地帯は多種の戦闘用メックを含む工業製品を創り出してきた。
大量の移民を連れ込んでまで、生産力を造り出したわりに、そこを守る基地の施設はあまり充実していない。
「守ることに興味がねぇんだよ。攻撃一辺倒だかんな、お氏族さんは。」
白衣を着た老齢の整備士がそれに答えた。
補給線の脆弱さと背面の守りの弱さは、100年前の侵攻以来、不思議と何も顧みられていない。
「どんな、強い武器も弾や燃料がなきゃただのガラクタなんだけどな。」
この部隊も氏族のことは嗤えなかった。
クリエフチでコクピットを大破させたTimberWolfは、部品不足から未だに修復されていない。
氏族メックは強力だが、一つ一つの部品が高額で通常の兵装では代替が利かず、維持が困難だ。
こんなものを方々の戦場で使い潰していれば、戦線が破綻しない方がおかしい。
オーケの次の溜息は大きなものになった。
降下船をわずかに20マイル水平に移動させるだけでも、相当な燃料費がかかる。
流線型のシャトルであれば容易い移動だったかもしれないが、彼らの乗る球型の降下船では無駄の多い移動だ。
地上に降り立った船をトレーラーで曳くわけにもいかず、わざわざ高度25マイルまで飛び上がって、弾道軌道を描いて再度降下する。
整備班も他のクルーも、でき得る限り降下船の重量を減らすために搭載兵器や荷物と共に地上を移動してきていた。
大量のトレーラーやコンテナを借りても、節約できる燃料代と比べれば格安になる。
降下船の移動とは、それほどにまで大仕事なのだ。
先に到着した荷物が下ろされていく様子を眺めながら、降下船の打ち上げの時間を基地の入口で待つ。
車両は全てが到着していたが、徒歩で移動している何名かが未だにゲートをくぐっていなかった。
「へぇ、へぇっ。」
しばらく待っていると、情けない声を出しながらへとへとになったシフが基地の前に辿り着く。
背の低い彼女が座り込むと、彼女の引いてきた台車の巨大さが更に目立つ。
台車の背後から現れた肌の黒い男たちが、ビエンと口にしながら両手を叩いて彼女を称えている。
「グラッチェ、グラッチェ」
台車を押してもらった荒い息を吐きながら、シフはどうにかお礼の言葉を口にしていた。
台車の上では、巨大な獣の頭蓋の上に腰を掛けたエノリが地面の上に降りたそうにして下の様子を伺っている。
「何コレ?」
どこを指差せばいいのかわからずに、オーケはとりあえず疑問を口にした。
一見、ゴミにしか見えないようなものでも、台車の上のモノが全て丁寧に保存の処理がされたものであることは彼にでもわかる。
獣の骨や毛皮、目玉や内臓が悪目立ちしているが、他にも鈴のついた棒や太鼓のようなものが山と積まれていた。
「地元の方からのアンネさんへのお土産っす。」
「貢ぎ物ってこと...?」
どうにか声を絞り出すシフの答えに、オーケは両手で顔を覆う。
数日前の降雨について、この星系の住人の反応を聞いてはいたが、目の前にこうして捧げ物が並ぶと声が出せなかった。
もうしばらくすれば、この基地に赤い降下船が降りてくる。
混乱に巻き込まれないためにも、何かが起きる前に、彼女らを基地に収容しなければならなかった。
「シフちゃん、もう少し頑張って。」
オーケは大声を上げて、何人かの整備士を呼び集める。
身振りだけで、言葉の通じない住人達に別れを告げて、その場から離れた。
細かい説明は一旦全て省き、皆でとにかく重い台車を基地の中に引き入れる。
オーケの腰から下げられた通信機が、降下船の打ち上げ開始を告げるカウントダウンを始めていた。