Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Safdarjung Spaceport ,Union class Dropship , Jail
Alyina System, New Delhi
Alyina Mercantile League
6 February 3152
「イーグルクラフトグループのエリザベータざます。リーザとお呼び頂ければ、短く済むざます。」
一糸すら纏わずに居る蛮王を目の前に、エリザベータはハッキリとした口調で名乗りをあげる。
まるで、彼の前に座り込む女など目に入っていないかのように、毅然とした態度で言い放つ。
立ったまま、彼を見下ろす姿勢であるにも関わらず、互いの放つ圧力の衝突は彼女の方が僅かに気圧されている。
それは彼の足元に侍る、全裸の女のせいではない。
見た目の背丈の差では圧倒し切れない、巨大な存在感は狭い独房の中を完全に支配していた。
面倒そうな表情をしたシフが、彼を紹介する。
「ドルジ、ドルジ・ヘイゼン。メック戦士っす。」
「ウソは良くないざます。」
エリザベータはすぐに定型の紹介文のような彼女の言葉を、偽りと断じた。
「ヘイゼンの血名の意味を知らないほど、無教養ではないざます。それがファルコン氏族の将官の血統であることくらい、知っているざます。」
「ウソじゃねぇっす...。」
シフは指摘に悲しそうな小さな抵抗の声を上げたが、エリザベータはそれを聞かなかったことにする。
彼が何者であろうと、ただの変質者や拷問官でないことは彼女にも理解できた。
独房の腰掛けに座ったまま、エリザベータを見上げる眼差しは既に彼女の価値を探っている。
値踏みと示威、互いの好奇を満たすための言葉のないやり取りが、既に虚空で繰り広げられていた。
彼の剛直の汚れを、舌で丹念に舐め取る女の姿など背景の一部にすらならない。
しばらく続いた沈黙のやり取りを終わらせて、先に口を開いたのは男の方だった。
「...子を、産んだ経験があるな?」
「淑女に一番最初に訊ねる内容ではないざますが、男児を一人育てた経験があるざます。」
「十分だ...。」
エリザベータの回答に満足したのか、彼はすっかり彼女に興味を無くしたように見える。
艦橋へ案内しろ。と一言、彼が命じるだけで、すぐにシフは姿勢を正した。
これ以上の問答は無意味と、身を屈めて独房の戸を潜ってエリザベータは小さく嘆息する。
「...つまり、どういうことっすか?」
再び閉じた独房の扉を振り返りながら、シフが彼女に問いかけた。
腕を組んで、振り返るとエリザベータは彼女の疑問に答える。
「私は、あなたの隊長様のお眼鏡に叶ったようざます。」
「そもそも、イーグルクラフトグループの人がウチに何の用っす?」
首を大きく傾げるシフの今更な問いに、彼女はすっかりとあきれ返った。
「この部隊に用があるのは、私ではないざます。この基地の医療設備を正しく使うために、私がこの部隊に説明役として派遣されたざます。」
技術や知識はあっても、実際に機器の操作ができるかどうかは別問題。
その説明を行うのも、実際に動かすのも専門の技術者が望ましい。
だが、商人連合は万が一失うことになろうとも、自分の懐の痛むことのない在野の女医をこの部隊に送り付けた。
もちろんエリザベータの教養をもってすれば、説明も操作も完全に行える。
端くれではあっても、彼女も医療技術者だった。
エリザベータの説明に、ようやく合点のいった様子のシフと共に、独房区画の扉から外に出る。
元の配置に戻っていたマイは、どこか思いつめたような表情をしていた。
「あなた以外に、この独房を見張る人間はいないざますか?」
女戦士の思考が停止しているのでないかと疑い、エリザベータは彼女に声をかけた。
向上心や改善という言葉を失えば、それは教養の危機とも言える。
独房の守衛が囚人と同性であることは感心できても、中で行われている行為を考えれば、この人選は不適切さを感じた。
「私が、望んでここに立っているのだ。誰かに代わってほしいとも思わない。」
マイと呼ばれた戦士は、迷いない言葉でそう答える。
しかし、浮かない表情の理由が独房の中にあることを、エリザベータは視線の動きから感じていた。
「彼は...私よりもヌルとの方が身体の相性が良いのではないかと、睦み合いの音を聞いてそう思っていただけだ。」
シフが完全に廊下に出たのを確かめて、マイは区画の重い扉を閉ざす。
金属の擦れ合う音の後で、深いため息が彼女の口から漏れ出た。
「なるほどざます。」
エリザベータは目を細めて、女戦士の体つきを上から下まで無遠慮に確かめる。
身体にぴったりと密着したボディスーツは彼女の体躯の線をほとんど隠していない。
両手で剥き出しのマイの手を取り、力強い人差し指に唇で触れると、エリザベータはそれをそのまま自分の口の奥にまで差し込む。
そのまま、舌で指先から指の股まで丹念に唾液を絡めると、顔に驚きの表情を浮かべたまま、マイの肢体が反応を始めた。
彼女の頬に朱が宿り、膝や胴に一瞬の硬直が走る。
その様子を見て、エリザベータは眼鏡の位置を静かに直す。
「そこまで、丹念に開発されているのに、これ以上欲しがるのは教養が無いざます。」
エリザベータは慣れた手つきで、マイに背を向けさせると彼女の尻の肉を片手で鷲掴む。
「魚肉には魚の、獣肉には獣の良いところがあるざます。」
背筋をエリザベータの指が這えば、マイは前屈みの姿勢にさせられたまま、その刺激に全身を震わせる。
エリザベータはマイの顔を覗き込むと、強い口調で彼女を嗜めた。
「隊長様との関係はまだまだ月日が浅いはずざます。それにも関わらず、これほどに仕上がってるのなら、寧ろ驚くべきざます。」
マイの身体の向きを再び反転させると、彼女に面と向き合う。
変質者のような行為と受け取られているかもしれないが、エリザベータからすればこれはただの診察だった。
掌であっけにとられているマイの頭を静かに撫でる。
自分の身体への悩みは年頃の女性によくあること。
「彼の寵愛にしかと応えるならば、器を更に鍛えるざます。その方法を私がここで教えるのは無粋ざます。あとは、彼に臥所でじっくりと教わると良いざます。」
指先で彼女の胸の先端を弾いてみせると、マイは身を護るように自分の肩を抱いて顔を背けてしまった。