※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

256 / 281
Ep.29_03

Safdarjung Spaceport ,Union class Dropship , Jail

Alyina System, New Delhi

Alyina Mercantile League

6 February 3152

 

「イーグルクラフトグループのエリザベータざます。リーザとお呼び頂ければ、短く済むざます。」

 一糸すら纏わずに居る蛮王を目の前に、エリザベータはハッキリとした口調で名乗りをあげる。

 まるで、彼の前に座り込む女など目に入っていないかのように、毅然とした態度で言い放つ。

 立ったまま、彼を見下ろす姿勢であるにも関わらず、互いの放つ圧力の衝突は彼女の方が僅かに気圧されている。

 それは彼の足元に侍る、全裸の女のせいではない。

 見た目の背丈の差では圧倒し切れない、巨大な存在感は狭い独房の中を完全に支配していた。

 面倒そうな表情をしたシフが、彼を紹介する。

「ドルジ、ドルジ・ヘイゼン。メック戦士っす。」

「ウソは良くないざます。」

 エリザベータはすぐに定型の紹介文のような彼女の言葉を、偽りと断じた。

「ヘイゼンの血名の意味を知らないほど、無教養ではないざます。それがファルコン氏族の将官の血統であることくらい、知っているざます。」

「ウソじゃねぇっす...。」

 シフは指摘に悲しそうな小さな抵抗の声を上げたが、エリザベータはそれを聞かなかったことにする。

 彼が何者であろうと、ただの変質者や拷問官でないことは彼女にも理解できた。

 独房の腰掛けに座ったまま、エリザベータを見上げる眼差しは既に彼女の価値を探っている。

 値踏みと示威、互いの好奇を満たすための言葉のないやり取りが、既に虚空で繰り広げられていた。

 彼の剛直の汚れを、舌で丹念に舐め取る女の姿など背景の一部にすらならない。

 

 しばらく続いた沈黙のやり取りを終わらせて、先に口を開いたのは男の方だった。

「...子を、産んだ経験があるな?」

「淑女に一番最初に訊ねる内容ではないざますが、男児を一人育てた経験があるざます。」

「十分だ...。」

 エリザベータの回答に満足したのか、彼はすっかり彼女に興味を無くしたように見える。

 艦橋へ案内しろ。と一言、彼が命じるだけで、すぐにシフは姿勢を正した。

 

 これ以上の問答は無意味と、身を屈めて独房の戸を潜ってエリザベータは小さく嘆息する。

「...つまり、どういうことっすか?」

 再び閉じた独房の扉を振り返りながら、シフが彼女に問いかけた。

 腕を組んで、振り返るとエリザベータは彼女の疑問に答える。

「私は、あなたの隊長様のお眼鏡に叶ったようざます。」

「そもそも、イーグルクラフトグループの人がウチに何の用っす?」

 首を大きく傾げるシフの今更な問いに、彼女はすっかりとあきれ返った。

「この部隊に用があるのは、私ではないざます。この基地の医療設備を正しく使うために、私がこの部隊に説明役として派遣されたざます。」

 技術や知識はあっても、実際に機器の操作ができるかどうかは別問題。

 その説明を行うのも、実際に動かすのも専門の技術者が望ましい。

 だが、商人連合は万が一失うことになろうとも、自分の懐の痛むことのない在野の女医をこの部隊に送り付けた。

 もちろんエリザベータの教養をもってすれば、説明も操作も完全に行える。

 端くれではあっても、彼女も医療技術者だった。

 

 エリザベータの説明に、ようやく合点のいった様子のシフと共に、独房区画の扉から外に出る。

 元の配置に戻っていたマイは、どこか思いつめたような表情をしていた。

「あなた以外に、この独房を見張る人間はいないざますか?」

 女戦士の思考が停止しているのでないかと疑い、エリザベータは彼女に声をかけた。

 向上心や改善という言葉を失えば、それは教養の危機とも言える。

 独房の守衛が囚人と同性であることは感心できても、中で行われている行為を考えれば、この人選は不適切さを感じた。

「私が、望んでここに立っているのだ。誰かに代わってほしいとも思わない。」

 マイと呼ばれた戦士は、迷いない言葉でそう答える。

 しかし、浮かない表情の理由が独房の中にあることを、エリザベータは視線の動きから感じていた。

「彼は...私よりもヌルとの方が身体の相性が良いのではないかと、睦み合いの音を聞いてそう思っていただけだ。」

 シフが完全に廊下に出たのを確かめて、マイは区画の重い扉を閉ざす。

 金属の擦れ合う音の後で、深いため息が彼女の口から漏れ出た。

 

「なるほどざます。」

 エリザベータは目を細めて、女戦士の体つきを上から下まで無遠慮に確かめる。

 身体にぴったりと密着したボディスーツは彼女の体躯の線をほとんど隠していない。

 両手で剥き出しのマイの手を取り、力強い人差し指に唇で触れると、エリザベータはそれをそのまま自分の口の奥にまで差し込む。

 そのまま、舌で指先から指の股まで丹念に唾液を絡めると、顔に驚きの表情を浮かべたまま、マイの肢体が反応を始めた。

 彼女の頬に朱が宿り、膝や胴に一瞬の硬直が走る。

 その様子を見て、エリザベータは眼鏡の位置を静かに直す。

「そこまで、丹念に開発されているのに、これ以上欲しがるのは教養が無いざます。」

 エリザベータは慣れた手つきで、マイに背を向けさせると彼女の尻の肉を片手で鷲掴む。

「魚肉には魚の、獣肉には獣の良いところがあるざます。」

 背筋をエリザベータの指が這えば、マイは前屈みの姿勢にさせられたまま、その刺激に全身を震わせる。

 エリザベータはマイの顔を覗き込むと、強い口調で彼女を嗜めた。

「隊長様との関係はまだまだ月日が浅いはずざます。それにも関わらず、これほどに仕上がってるのなら、寧ろ驚くべきざます。」

 マイの身体の向きを再び反転させると、彼女に面と向き合う。

 変質者のような行為と受け取られているかもしれないが、エリザベータからすればこれはただの診察だった。

 掌であっけにとられているマイの頭を静かに撫でる。

 自分の身体への悩みは年頃の女性によくあること。 

「彼の寵愛にしかと応えるならば、器を更に鍛えるざます。その方法を私がここで教えるのは無粋ざます。あとは、彼に臥所でじっくりと教わると良いざます。」

 指先で彼女の胸の先端を弾いてみせると、マイは身を護るように自分の肩を抱いて顔を背けてしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。