Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Safdarjung Spaceport ,Union class Dropship , Jail
Alyina System, New Delhi
Alyina Mercantile League
6 February 3152
「わざわざ、マイにそんなことまでしてもらうことになるとはね。すまないね。」
「いや、つくづく私ではヌルには勝てないことを思い知った。」
床についた赤い染みを布で拭きとりながら、マイはヌルの声に答えた。
彼女の肌の表面を走るインプラントと遺伝子調整の結果、ヌルの身体は身長が伸びなくなった代わりに、身体は女らしく丸みを帯びている。
マイとの睦み合いで、彼女の肢体は異性を知る前から表面だけでなく、体内を這う神経にまで色香を宿していた。
男に身体を許した経験がなくとも、僅かな知識があればヌルはいつでも男を狂わせる器量を持っている。
だが、そんな強靭なはずの体力をもってしても、彼の体力が尽きる前にヌルの腰が抜けた。
しばらくの間、起き上がることすら困難な彼女の代わりに、マイが濁った液体の残る独房の床を掃除している。
「彼に抱かれて、納得したよ。ボクはやっぱり、女なんだな。」
両の掌をまっすぐに天井に向けて、手の甲を眺めるヌルになんと声をかければいいのかマイは考えこむ。
エリザベータが立ち去った後にも続いた男女の交わりは、彼女が血の痛みを忘れても続けられた。
「そんなはずはないのに、彼を受け入れた時に、まるで運命のような一致を感じてしまったんだ。」
初めて身体を重ね合ったにも関わらず、まるで長らく愛し合ってきたかのようなピースとピースの嵌り合う快楽。
エレナと同じ言葉をヌルが口にしたことで、マイの顔は更に陰った。
マイは男によって、ヌルが扉の向こうで溶かされていくのを聞いている。
自分の妻の小さな悲鳴や苦悶の呻きの全てが、別の声に生まれ変わるまでを彼女の耳に収めていた。
だから、マイはヌルが男に恋を覚えた瞬間を知っている。
才に満ちた恋人が、新たな才を得る後ろ姿はいつ見ても眩しい。
「マイだって、このわずかな間に随分と体つきが変わったじゃないか。」
羨むマイの眼差しに、ヌルは笑みを返す。
未だに彼女は、全身の力が抜けて男と女の境界を失う境地に至ったことがない。
それは、胸や尻の丸みが多少増した程度では、なにも変わらなかった。
彼との交歓でマイが知ったのは、強者と相まみえた時を超える高揚感とその強者の種を欲す子宮の強い渇望、白く重い波頭に洗われる悦び。
彼に肌を打たれれば、欲望の奥底に通じる通路は何度であろうとその入り口を開く。
その感覚を思い起こすだけで、彼女の秘められた芽の部分に血が集まった。
彼に触れられるだけで、マイは本能は全てが剥き出しになり、途方もない悦楽の奔流を身体の内側から呼び覚ます。
しかし、それは彼女らが口にするような、身のくすぐったさを覚えるような甘い快楽ではない。
マイが日数を重ねてもできなかったことを、今日の数時間でヌルは体得した。
慰めの言葉の代わりか、ヌルは身を起こすとマイと唇を重ねる。
「彼に、昔のオドンの話をしたんだ。」
ヌルは突然、妹の話を切り出した。
彼を呼び出した目的を彼女が果たしていたことにマイは驚く。
意識が飛ぶまで彼を受け入れながら、それでもヌルは彼と言葉を交わしていた。
「彼はボクが思ってたよりも彼女のことを気にかけている。何か手を打ってくれるそうだ。」
訓練生だった時代に、彼女が乗ったことのあるメックの名前を覚えている限り、彼の耳元に囁いたのだという。
とんだピロートークだったよ。と剥き出しの胸を張る彼女にマイは感心する。
初めて味わう痛みに耐えながら、それでも彼女は彼と対話をしたのだ。
「あとね、マイ。僕らに関係のあるニュースがある。」
急に声を潜めて、ヌルはマイの耳元で囁く。
女戦士の顔から色気がすっと消える。
「ボクらのメックを載せたままの3番艦がSeaFoxの手に落ちていて、それがこの星に回航されてきているらしいんだ。」
口の中に笑い声を含みながら、ヌルは顎に手を添える。
耳を疑うマイに呆れたような口調で、彼女は言葉を続けた。
「彼らはそれを頂戴する気だよ。ホント、とんでもないよね。」