※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.29_06

Ship Yard Area , Entrance

Alyina System, Noida

Alyina Mercantile League

8 February 3152

 

 何も言わずにゲートを通り抜けようとした、リーザ達の前に屈強な警備員が立ち塞がった。

「待て、貴様ら...アポイントメントは...あ...っはぁ...」

 制止の声に素直に歩みを止めたアリマは、彼らの前に飛び出してきた男に目を向ける。

 だが、彼女の隣を歩いていたリーザは、警備の男のすぐ間近に迫るまで、脚を止めなかった。

 長身の迫力に気圧されたのか、腰の引けた声を漏らした警備員から威圧感が消えている。

 男の不審な反応の理由をアリマはすぐに見つけて、理解した。

 彼女の視線の先では、長身の女の長い脚の先が、彼の足の上に乗っている。

 リーザの鋭い踵の先は、警備の男の固い靴の革を徐々に破り、埋もれていく。

 それをやっている当人は蔑視するかのような目つきで、全身を戦慄かせる男を見下ろしていた。

 アリマはそれに何も言うことができず、見守っている。

「急に人前に飛び出すなど、教養のない人間のすることざます。」

 そう口にしながら、彼女は体の重心を更に前に進めた。

 鼻同士が触れ合いそうなほどに顔と顔が近づいても、男は何も言い返せずに、ただ唇を真っ青に染めて震え続けている。

 やがて、何かが押し破られる音に続いて、固いものが潰れて砕ける音が聞こえた。

 ついに屈強な男は歯をガタガタと揺らしながらリーザの肢体にしがみついた。

「商人連合のリーザが通るざます。よろしいざますね?」

 彼女の脅すような言葉に彼はがくがくと首を縦に振る。

 それを目にすると、彼女は彼の頬を平手で勢いよく叩く。

 重い肉体が小さな悲鳴と共に横に倒れこむ。

「淑女の腰に無遠慮に触れるのは、教養のある人間のすることではないざます。」

 リーザのお決まりの言葉の下で、掠れるような息を漏らしながら、警備員は足を抱えてもがき始める。

 彼の股の間の布が徐々に色を濃く変えて、周囲の空気に強い臭いを放つ液体が流れた。

 

 唖然としながら、同僚の様子を伺う他の警備員を一瞥するとリーザはすっと、男の足の甲から踵を引き抜いて言い放つ。

「これで彼も、教養が身に染みたはずざます。」

 自由になった足を抱えながら、すすり泣く大人の男を短く嘲ると、彼女はそのままその先に向けて歩みを進め始めた。

 

「ぶひぃ...ぶひぃ...」

 あまりの痛みに、家畜の声ような呻きをあげる警備員を脇目にアリマたちもリーザの背を追い始める。

 突然の蛮行に、彼女たちの後を追ってくる人は誰もいない。

 

――教養...ってなに?

 

 アリマは目を瞬かせながら、目の前で起きた出来事を反芻した。

 だが、その行為はまるで無駄に終わる。

 後ろを振り返れば、ゾリグやナランも豆をぶつけられた鳥のような表情を並べていた。

 

 作戦ではリーザに商人連合の名を出させて、現場が対応に追われているうちに建物の奥に入り込む。

 そんな算段だったはず。

 どうして、警備兵の足に穴を空けて、失禁させなければならなかったのか。

 

 リーザはいつの間にか手にしていたカードを掲げて扉をどんどん開いていく。

 それは警備員の胸に差さっていた、名札の代わりだった。

「その手技も教養ってわけ?」

 アリマは意を決して、リーザに声をかける。

 彼女は眉ひとつ動かすことなく、平然とそれに答えた。

「当然ざます。ここの警備長のキーカードならば、この建物の奥にある格納庫まで全ての道が拓けるざます。」

 長い脚と高いヒールにも関わらず、リーザは早足で予定通りの進路を前に進んでいく。

 稀にこの建物の従業員とすれ違っても、その高い長身に相手が驚いているうちに彼女は先に進んでしまう。

 手にしたカードで次々とセキュリティを抜けていくリーゼを止めようとする人間はいない。

「ちまちまとアリマさんがシステムを弄るよりも、余程早いざます。」

 背の低いアリマは、置いていかれないように、ほとんど走りながら彼女の後を追った。

 ついに、最後の扉が左右に開いてしまう。

 全員が仲に入ったことを確かめると、リーゼは用済みになったカードキーを室内の床に放った。

 さぁ、進むざます。と彼女はアリマ達に声をかける。

 

 彼女の言葉の意味は理解できた。

 しかし、目の前で起きた一連の出来事に、アリマの理解はまだ追い付かなかった。

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