Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Warehouse District
Alyina System, Noida
Alyina Mercantile League
8 February 3152
「兄者ー、ワイヤーの拘束を確認したであります。」
「ご苦労。それでは弟者よ、我らは小型車にてトレーラー2両の先導をする。運転を頼むぞ。」
「承知した、兄者。」
芝居掛かったセリフに、ほとんどカートゥーンのような挙動。ふざけているように見えるが、これは彼らの個性だ。
ワンボックス車の運転席と助手席に、ほぼ同時に乗り込んだ彼らの声はそれっきり聞こえなくなる。
整備士達の仕事とは、本来は静かなものだ。
「2つのコンテナは確かに受け取りました。」
商人連合の係員から、オチルがタブを受け取る。
整備士達を引き連れて、彼はオスキャルの名代として商人連合から物資を受け取りに来たのだ。
誰が、どこでどんな取引をしたのかはここにいる人間たちには関係がない。
ここではきれいなスーツや制服に身を包んだ人間は場違いだ。
本来はトレーラー一両で済んだはずの補給品は、オマケのせいで、トレーラー二両で牽引することになる。
なぜ物資にオマケが付いたのかは、整備班長という立場では知り得ない。
だが、それでもオチルが書類にサインをするタイミングが、とても大事なことは察していた。
「ラグナル、1番トレーラーの助手席でバヤルさんの誘導。ヨハンの班はセダンで後衛、ラースは1番のトレーラー、俺は2番のトレーラーの銃座につく。」
オーケは、額に寄せていたゴーグルを装着し直す。
次々と輸送隊の車両の内燃機関に、火が入る。
「ラグナルさん、運転席変わります。」
梯子に手をかけて登り始めると、オチルも足の下で繋がる運転席に全ての手続きを終えたトレーラーに乗り込んでいる。
ラグナルが身体を横にずらして助手席に写ると、トレーラーのギアが入る。
オーケは通信の内容を耳に入れながら、狭い円筒の中に身を納め、機関銃のレバーを引いた。
『馬よ、馬よ、我が王国よ!』
バヤルの謎の口上が通信機に流れる。
そのセリフの由来や意味はわからないが、その言葉で班員の息が引き締まった。
「1番トレーラー、準備良し。」
オチルの報告を皮切りに、次々と他の車両からも準備完了の報告が届く。
オーケは口元を防塵マスクで覆う。
待ってましたとばかりに、排気パイプから噴き出る軽油を燃やした黒い煤塵が色を濃くする。
『上空のVisigoth2番機からデータリンク。誘導始まります。』
『進め、進め、進め。』
轟音を立てて、重い車輪が前に転がり始めた。