Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Camp Jaipur , Hanger
Alyina System, Noida
Alyina Mercantile League
8 February 3152
騒がしい音に誘われて、あたしは基地の格納庫に辿り着いた。
ここに来ると訓練、訓練で鬼のような形相のマイに毎回、しごかれている。
正直、もう操縦桿なんて見たくもなかったけど、それでも何かが気になってこんなに来てしまった。
「聞いてる?B、o、o、b、s、よ。こんな短いふざけたパスワードあるっ!?」
「ふぅっ、アぁ、リマちゃん...んぅっ、こんなところじゃ嫌だよぅ...。」
入り口を抜けると、そこでは怒りの形相のアリマがパイロットスーツの上からドルマーの胸を揉みしだきながら、わけのわからないことを叫んでいる。
ドルマーの顔は涙でぐちょぐちょだけど、喘ぎ声には悦びが混じっていた。
アリマの両肩に置かれた彼女の手と、互いの絡み合った脚を見れば二人の仲がわかる。
――いいなぁ。
2人の腰の布が擦れ合う音を羨みながら、あたしは当てのない探し物の旅に戻った。
観音開きの扉の前にいるゾリグの背を見つけて、少しだけ胸が跳ねる。
手術を受けてからそろそろ一ヶ月。シタ先生に傷が開くから、と激しい運動を禁止されていた期間がそろそろ空ける。
そう思うとお腹の下の方がどうしようもなくうずく。
それなのに、今のあたしにはゾリグに声をかける自信がなかった。
俯いて、床の模様を眺めながらその場を離れる。
行く先もなくぶらぶらと歩いていると、赤い光る棒を持ったおじさんに叱られた。
名前を知ってるはずなのに、どこの誰だかわからない人。
彼に歩みを止められて、仕方がないからそのまま、2台のトレーラーが中に誘導されるのを見守る。
大きなコンテナをいくつも積んだ1台目が通り過ぎて、ごわごわの布が被さった2台目のトレーラーの荷台がちょうどあたしの目の前で止まった。
「トヤーちゃん、これから荷下ろしするから離れて。」
きっと、親切で言ってくれてたんだろうけれど、あたしにはその言葉が何か悲しい意味に聞こえてしまう。
ぼろぼろと涙をこぼすあたしを見て、おじさんは慌て始める。
「ああ、もうわかったから、見てていいから。でも、お願いだからあと3歩。3歩でいいから後ろに下がって。」
そう言いながら、おじさんは棒立ちになるあたしをずりずりと押す。
そんな騒ぎは気にもされず、おじさんの後ろでは荷下ろしが始まる。
ワイヤーが解かれて、大きな布が剥がされていく。
だんだんにそのボディが露わになると、あたしは泣くのをやめた。
平べったくて丸い頭部、鶏みたいな脚、背中と腕部にごっそりと積まれたミサイル発射機。
翡翠色に輝くその姿にあたしは見覚えがあった。
「なんだ、お前もこっちに来れたんだ?」
ぼーっとた頭で、あたしはその軽量級のメックを見上げる。
あの時と同じ機体なのかはわからないけれど、あたしと一緒に地獄を脱走した高速機。
目の前に現れた機体は、紛れもなくJennerIICだった。