Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Camp Jaipur ,Aurora Class Dropship,Bridge
Alyina System, Noida
Alyina Mercantile League
12 February 3152
この話を公にするのは初めてだった。
ヌルの仲間が知っているのは、彼女がウーリントヤでなく、ヌル・イカザとなった後の姿。
だから、ほとんどの仲間たちは、彼女の本当の名前や年齢すら知らないでいた。
それ以前の姿については、話す機会も理由すらないままに、共に轡を並べている。
「どうして、その海賊はオドンを殺さずに捕まえて自戦力に加えたのかしら?」
「ロシャークタロンはその頃に地上戦力を大きく戦力を減じているわ。そこから立て直しに数年はかかってる。失ったメック戦士の足しにしようと考えたのでしょうね。ツォンシャンで遂に討滅されたみたいだけど。」
首を傾げるエレナの問いに、エノリが答えた。
彼女はヌル達の知らないうちに、ここアリイナ星系の情勢にも造詣が深くなっている。
ヌルの姉妹たちの過去を、最初に知りたがったのも彼女だ。
片手を失っても、エノリの嗅覚は変わらない。
「彼らのようになりたくなくて、エノリがSeaFoxとの交渉に活路を見い出そうとしたのだけど...、結局、ボクらはこうなった。」
ヌル達はメックを失い、船も、仲間も失った。
それが正しかった、とは言わない。
「仲間を3人失ったことは悲しい。でも、マーク、デメトリウス、エリスの犠牲は僕らの生存に繋がっている。だから、エノリの判断をボクは尊重しようと思っている。」
だが、間違いでもなかった。何よりも彼女の判断は今の仲間達の生存に繋がっている。
こうして、降下船は戻り、メックまで取り戻した。
「一番正しくない判断をしたのは、あの時に艦隊が、海賊に身を窶すのを良しとしたボクだ。」
19才の少女が26歳のフリをし、誤った判断を下し続け、危うく7年前と同じ結果を迎えそうにすらなる。
「僕らの新しい指揮官を、ドルジ隊から選んでもらっている。ボクのように、誤った判断をしない指揮官を。」
ヌルは表情に僅かな悔しさを滲ませながら、言葉を続けた。
彼女たちの所属する新しい部隊、その指揮官はヌルではない。
オーロラ級降下船を拠点にした独立性の高い部隊を指揮しながら、彼の名代になるためにはヌルでは経験が不足していた。
「ボクらは改めて、ドルジの部隊の指揮下に入る。オーロラ級の操船に関わる人材もドルジ隊から供給される。」
みんなには、これを認めてほしいんだ。ヌルはキッパリとした口調で、皆を見渡す。
彼女の同意を求める視線に、エノリがすぐに口を開いた。
「私は、もう自分で何かを判断するのはコリゴリ。」
心底そう感じているような口調で、肩を竦める。
彼女さえ、反対しなければあとは安泰だった。
他の2人は、ヌルと同様に心と、あと何より彼女らの肢体が、彼に逆らおうとしない。
「彼ならば、間違いのない配置をしてくれるに違いない。」
「ふぅ、ヘイゼン様...。」
力強い言葉を口にするマイと恍惚の表情を浮かべるエレナ。
安心と不安が横に並ぶこの光景は、アリイナに至る前から変わりがない。
こうして、チームの意思は決した。
「そういえば、マイ?」
両手を自分の胸に添えながら、ふと気がついたようにエレナはマイを振り返る。
「あなたは、ヌルの姉妹の話を知っていたのね?」
すぐにでも、エレナを止められるように身構えていた彼女は驚きと困惑の表情を浮かべた。
エレナが自ら自慰の手を止めたことに、その場の誰もが意外そうな表情を浮かべる。
少し考えた後に、マイは彼女の問いに答えた。
「知っている。ヌルがずっと、その悪夢に魘されていたことも、その他のことも、私が一番よく知っている。」
その言葉に、エノリが僅かに顔を翳らせる。
だが、すぐに諦めたように首を振った。
「勝てないか...、ヌルは、私と寝ててもマイと寝言で言う...。」
「それが、最近は寝言でドルジを呼ぶんだ...、色っぽく。」
マイの最後の一言で、ヌルは顔に血が昇るのを感じる。
ひと時は皆の散逸を感じて、ヌルはもうそれは戻せないものと諦めてすらいた。
だが、彼女達は再び一つになっている。
3人を失ったのは、確かに悲しい。
だが、残った4人がこうして再び戦場に舞い戻れることは、奇跡以外ではあり得なかった。