Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Camp Jaipur ,Union Class Dropship,Bridge
Alyina System, Noida
Alyina Mercantile League
12 February 3152
「指揮官ねぇ。」
オスキャルは顎を掻く。
目が合ったわけでもないのに、アリマがグルンと首を後ろに回して釘を刺す。
「あたしはドルジから離れないわよ。」
「そもそも、おめぇさんを船長にしたら、そりゃ海賊船だろうがよ。」
老将の指摘に、アレフが静かに頷いて同意する。
アリマと共に、対空監視や周囲の通信の警戒を彼はしていた。
耳当てをしていてもなお、彼は艦橋の音を聞いている。
あまりに堂々と聞き耳を立てているので、オスキャルは彼がまだ、旗色を明らかにしていないことを忘れそうになっていた。
「指揮官ねぇ...。」
「...え?私ですか?」
もう一度、同じ言葉を発すると、遂にナランが彼の視線に気がつく。
「船長はおめぇさんでも良いかもしてねぇが、戦闘指揮を取る奴は別にいた方が良いな。」
老将はこめかみを一掻きした。
出来れば若い人間に、経験を積ませたいところだったが、この部隊には大きな問題がある。
普通の軍隊ならば、到底考えられないような悩みだ。
「ドルジがよぅ、ちょうどいい人材をバンバン孕ませるから頭痛ぇったらありゃしねぇ。」
ツェレン、プリヤンカ、アンネとそれぞれ長所と短所のある人材がこの部隊にはいる。
しかし、彼女らはそれぞれ子を成してしまったので、今回の選定には使えない。
いっそ、アルタンエルデネという考えも浮かんだが、彼は彼でドルジの子を宿したシタという欠員を埋める役割があった。
「...エミリーヤちゃんの枷を解く時が来たかもしれんなぁ。」
理由が人材不足というのが情けない話ではあるが、ただ捕らえているだけというのは、やはり勿体無い。
だが、それには珍しく、ナランが拒絶の表情を浮かべる。
「彼女に指揮をさせるのですか?」
「経験は十分だ。船員からの信頼がねぇのが問題だが。」
それは、戦闘班のヌル達にも同じことが言えた。
どちらも味方というには過去の因縁が良くなさすぎる。
如何に彼女たちが、猛々しいモノに屈していようと、それだけでは人を納得させることは難しい。
思考の合間を突くように、ナランがオスキャルに向きなおる。
「もし、私をオーロラ級の操船に充てるのであれば、ご検討いただきたいことがあります。」
「ほほぅ、聞くだけ聞こうじゃないか。」
この大男が嘆願とは珍しかった。
人事の割り当ての話をしている最中だから、人の割り当ての話なのだろう。
オスキャルは彼の言葉に興味があった。
「オーロラ級に、リーゼ殿を割り当てていただきたいのです。」
「...色恋か?」
「わかりません。ですが、私が舵を握るならば、彼女に隣にいて欲しいと思いました。」
違うのならば違うという男が、答えを濁す。
それだけで、状況は愉快だった。
「彼女の意思確認が必要だ。だが、検討はしよう。」
「ありがとうございます。」
素直な男は礼を述べると、他には何も口にしない。
肝心な懸案には何の助言もなしだ。
ふと、オスキャルの頭に妙案が思い浮かぶ。
その案には大きなデメリットがあったが、そこさえ吞んでしまえば様々な問題が解決する。
「ナラン、お前ぇの意見を聞きたい。」
ナランが再び彼を振り向く。
助言を求めはしたが、老将はほとんどその意思を固めている。
次の瞬間、オスキャルの提案を耳にした全員が、艦長席を振り返った。