Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Over Zuhai
Zhongshan System
Jade Falcon
17 March 3151
「2番機、ブラックアウトを抜けた。全て正常。」
大気圏突入時の通信不能が終わる。1番機の指示に応えてドルマーはすぐに報告をした。
もうここまで来れば、あとは全員が基地に降りるだけだ。
帰ったら、ウサギの背中に顔を埋めよう。あの変な呼び名“首狩兎”なんて、しばらく忘れて。
ドルマーの思索を断ち切るかのように地上からの通信が割り込んだ。
「スマン、もう一働き頼む。」
無断出撃したTimberWolfの支援に向かってくれ。それがコボルの悲鳴だった。
無断出撃のケツ拭き。と聞いてドルマーは一瞬トサカに来たが、コボルの再度の「頼む」で心を鎮めた。
「2番機が行く。4番機、続け。」
長距離ミサイルをまだ残しているツェレンに声をかけて、機体の方向をくるりと変える。
1番機の了解は要らない。彼には残りの機体を基地に連れて帰る役目がある。
偶然か、幸運か。そう遠くない距離にTimberWolfはいた。
ツェレンが無言で長槍を放つ。命中させる意図はない。「お前の相手は我らだ。」と敵に伝えるのが目的だ。
その意図が伝わったのか、TimberWolfを追っていた2機のメックの脚が止まり、空を警戒しはじめた。
続けて同じ目標、Wolverineにドルマーの2番機が襲い掛かった。
“首狩兎”の一撃を受けたWolverineはバランスを崩して大地に倒れる。
そこに更に4番機のレーザーが襲い掛かる。
ドルマ―達は傭兵の目をTimberWolfから逸らすために通常より低い高度で交戦をしていたが、護衛機のいないメックに捉まるような2人ではなかった。
致命傷を受けてなお、両の足で立ち上がるTimberWolfに対して、攻めあぐねていた敵の傭兵団はその後も散々にドルマー達からレーザーを浴び、ついにTimberWolfを仕留めるのを諦めた。
「社畜」と名に冠する傭兵団だが、残業は嫌らしい。契約通りにしか働かない、よくいるタイプだ。
ドルジも、撤退する気になったらしく後退を始めていた。どうせ本人は、勝負に水を差されたとでも思っているのだろう。それがまた腹立たしかった。しかし、これはドルジでなくコボルへの貸し1つ、なのだと思うと、ドルマーは気が晴れた。
——気圏戦闘機隊はコボルに大きな借りがある。
隊長の言葉を思い返す。負っている借りはこれで少しは返せたのだろうか?
4番機を振り返る。ツェレンは今日も彼女の傍に付いている。
借りの詳細は知らない。でも、その借りは彼女の背に貼りついた影が大きく関わっているのであろうことはドルマーなりに察していた。