※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.04_10

Ammo Dump Command Office

Zhongshan System, Zhuhai

Jade Falcon

26 March 3151

 

 ドルジが攫ってきた女は、どう見てもメック戦士にしては身が細すぎた。

 

 肩まで伸びた髪はぼさぼさに乱れ、薄汚れた貫頭衣に身を包み、両手は細く力を感じさせない。まるで古代遺跡から彷徨い出てきた亡霊のような姿だった。

 司令室の入り口に、ぽつねんと立つその姿は、艶やかなものでも、凛としたものでもない。ただ、そこにいるだけで、場の雰囲気を損ねていた。

 

 ドルジはこの女を「メック戦士として復職させる」と言う。

 新手の冗談かと思った。だが、ドルジが言うなら、きっとそうなるのだろう。反論しようとして、コボルは言葉を飲み込んだ。

 今のコボルに、ドルジの決定に異を唱える力も資格もない。

 

 ドルジが彼女を残してどこかに去っていく。

 司令室の扉が閉まると、二人きりの静寂が落ちる。

 女は、静かに顔を上げると、こちらを真っ直ぐに見た。

 その目は、どこか翡翠色の混じる、深い碧だった。

 

「あなたは、成したいことを成す前に死ぬわ」

 

 歌うような声は、よく通る。だが淡々としていて、威圧でも侮蔑でもない。ただ事実を述べるような響き。

 女はまるで、何かを見透かすようにコボルを射抜いていた。

 

——誰が殺すって? まさか、俺が暗殺でもされるとでも?

 

 喉まで出かかった皮肉を、ぐっと押しとどめる。こんな状況でふざける余裕はない。

 この世に、わざわざ俺を殺そうとするほど酔狂な奴がいるものか。

 

「あなたは人よ。人には人の限界がある。あなたはそれを越えようとしている。……誰かがあなたを殺す前に、あなた自身が先に滅びるわ」

 

 女はさらに言葉を重ねる。その声音は月光のように静かで、どこか優しさすら感じさせた。

 

 過労死、神経衰弱、突然死……

 言われてみれば、笑えない話だ。最近は確かに無理を重ねてばかりだ。だが、そんな簡単にくたばるつもりもない。

 

——そう簡単に死ぬもんかよ。俺にはな、まだ夢がある。

 

 そう心の中で返すと、女はまるでその思考を読んだかのように、そっと首を横に振った。

 

「不器用な人。あなたは、いつも一人ね」

 

 呟きは、嘆息ともため息ともつかない。

 そこに混じる彼女の感情をコボルは読み取れなかった。寂しさか、哀しみか。

 

……いや、そもそも、俺は一言も発していない。

 

 ハッとする。さっきからこの女は、いったい誰と喋っているんだ?

 口も動かさず、ただ視線だけをこちらに注ぎ続けている。

 

 ふいに、女の唇が微かに動いた。

 

「人を信じて。それもまた、勇者の素質よ。」

 

 距離はあるはずなのに、声がすぐ耳元で響くように感じられた。

 忠告か、預言か。それとも、ただの独り言なのか。

 コボルは混乱し、知らず眉根を寄せていた。

 

 この女は、何かが違う。常人の枠をはみ出している。

 これ以上関われば、ろくなことにはならない──

 直感が警鐘を鳴らしている。

 

 だが、なぜか目が離せなかった。

 ほんの一瞬、女の澄んだ瞳に映るものにふと興味がわく。

 

 ……やめておけ。

 あれは、人が触れてはならない類だ。

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