Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ammo Dump lounge
Zhongshan System,Zhuhai
Jade Falcon
20 April 3151
コボルは弾薬集積場のラウンジに、基地の人間をすべて集めた。
数十名の視線が彼の一言を待っていたが、コボルはすぐには口を開かなかった。少し間を置いてから、ぽつりと告げる。
「……地球圏での決戦が終わった。鷹は、またしても狼に敗れた」
誰も言葉を継がなかった。
何人かは目を伏せ、何人かは天井を仰いだ。
だが、怒号も、嘆きもなかった。沈黙だけが場を包み込んでいった。
やがて、ツェレンが唇を噛んで項垂れた。俯いた肩が、わずかに震えている。彼女の隣にいた隊員が、迷うように手を添えた。
飛行隊の生還者の名簿に、彼女の夫の名はなかった。
彼女を見つめる視線が、いくつも集まっていた。
ーー4年前か。
今も記憶に残っている。彼女とあいつの結婚式は飛行隊の格納庫でやった。基地一番の美女の結婚を皆が惜しみながら手作りで祝った。この基地にとって、束の間の春だった。
だから誰もが知っていた。彼女の涙が、ただの一人の悲しみではないことを。
基地に帰還しない者は彼だけではない。この基地から発った戦士は誰一人還らない。彼女はそれを表に出すまいと必死に抑えようとしているが、抑えられていない。敗戦の衝撃が喪失の悲しみに塗り替えられていく。
場には、もう言葉ひとつ入り込む余地もなかった。
コボルは、地球の件についてはそれ以上語らず、スクリーンの一角に指を向けた。
「基地は維持する。周辺都市との折衝も始めている。我々は今や最前線の基地になろうとしている。」
短く、それだけだ。誰も訊かない。誰も問えない。
医官や技術者はわずかな数が生き残った。艦隊も一部は残った。だが、戻ってはこない。狼の損失を埋めるため、地球圏に釘付けにされる。
かつてこの星域に広がっていた鷹の占領地は、今や空洞だ。
空白を嗅ぎつけた者たちは、もう動き出している。
機能しないHPG通信の裏で、静けさの奥に蠢く気配が感じ取れた。
戦の煙がまた空を覆う。時間の問題だった。
「生き延びて、我々より大きな残存勢力との合流を目指す。それが当面の方針だ。」
ズデーテンへと戻りたい者もいるだろう。
鷹は爪だけが能ではない。商人艦隊と接触して再起を狙う者もいるだろう。
「俺は、ここを離れられない」
言葉は短く、重かった。
それを最後に、コボルは視線を切った。
会場の片隅で、誰かが小さく息を呑んだ。
彼が動けない以上、この星系を出て使える人間は限られている。
伝令は、ドルジに託すしかなかった。
18 April 3151
Salina — MIA
Last known deployment: Ontario, Canada
Final transmission: Jammed / unrecoverable
Presumed KIA. No body recovered.