Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ammo Dump
Zhongshan System,Zuhai
Jade Falcon
20 May 3146
「おい、サリーナ。入るぞ。」
ノックもせずにサリーナの部屋に入る。
机に向かって何かの作業をしているサリーナに目をやりながら、まっすぐに彼のカメラ用品の棚に向かう。
「カメラのレンズを掃除したいんだ。先の尖っている綿棒をくれ。」
いつもの引き出しを開けて、目当てのものを2、3本拝借する。
「いつもの場所にあるはず。」
遅れて返事が返ってくる。
部屋の中には相変わらず、三脚やケースが所狭しと並んでいるが、散乱はしていなかった。
誰がとは言わないが、片付けをしているのだろう。
部屋の内装も少し変わっている。増えていると言うべきか。
ゾリグはサリーナの机に近づいて、机の上を覗き込んだ。
彼が手元で弄っているのは模型ではない。もっと小さな機器だ。
「何やってんだ?」
サリーナの手元には、一本の糸のような紐と宝石、台座、小さな基板が並んでいた。
細いピンセットか何かで操作しているが、先端が細かすぎて、彼が何をやっているのかはゾリグには見えなかった。
細い紐の両端には指先に引っかかりそうな三角錘の布が付いていた。
撮影に使う道具ではなさそうだが......
ゾリグは興味半分で作業中の機器を手に取る。
小型だが、サーマル発電器に周波数の固定された電波発信装置が組み合わされている。
「……発信機?」
「よくわかったね。肉眼で見えるものじゃないんだけどな。」
「何に使うんだ?紐の用途がわからんが......」
答えを探って、サリーナの脇に置かれた籠に目をやる。
途端に答えがわかった。
「まさか……これが下着か?」
「そうだね。」
一見してそうだとわかるものと、着用方法のわからないモノの2通りが籠の中に入っていた。
いくつかは装着が終わっているようで、どれも首にかかる紐の中央に固定されていた。
洗濯の時に困らないように、機器の部分は丁寧にコーティングがされている。
――フロントホック派か。
どうでもいいことに気が付くようになったのは、相棒のお陰かもしれない。
過激なデザインの物しかないことに違和感を感じた。
あの胸のサイズの女なら、全体を覆うような形状のタイプを選ぶはずだ。
ここに積まれているものは、ほとんどがズハイのブティックでしか売っていないブランド物。
ほぼ、オーダーメイドの一点もの。全てデート用の下着だろう。
ゾリグはそう直感したが、それをわざわざ口にするのはやめにした。
経験の少ないサリーナにわざわざ入れ知恵するつもりもツェレンの見栄に首を突っ込むつもりはない。
「……発信機を仕込む話は本人は知ってるんだろうな。」
「知ってるよ。ちゃんと仕組みも説明してある。」
「そうか......そうなのか......」
サリーナは作業の手を休めずに答える。
発信機を仕込むことになった経緯に興味が湧いたものの、それは考えても無駄だろうとも思った。
予備のルーペに気がついたゾリグはそれを目に装着すると、机の上に置いてある自分の道具箱から、一番細いピンセットを取り上げて手伝い始めていた。
あまりの部品の細かさに息を止めて指先の震えを抑える。
しばらく2人は無言で作業が続けた。
下着に装着する工程はサリーナに任せる。
「調達は......コボルだな?」
「うん、そうだね。」
最後の一個を組み終えたゾリグは、確認するように言った。
調達元はわからないが、部品はどれも軍用とは違った。
もっと、異質な専用品だった。