Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship Walk
Blumenort System, Zenith
Lyran Commonwealth
30 April 3151
「うわっ」
台車の上に3段に積まれた金属クレートが揺らいだ。それを支えようとしたオチルは手を差し伸べるが、足元のグリッドに引っかかったせいか、派手に転んだ。
床に伏した彼の上を、鈍い音と共にクレートの山が傾いでいく。上の一つが宙に浮いた。
あわてて体をねじって両手をぶんぶんと振るが、手の先が何かに触れることはない。
次の瞬間を覚悟し、オチルは固く目をつぶった。
「オチル!?」
誰かの声が聞こえた。待ち構えていた衝撃がなかったので、オチルは目を薄く開いた。
滑り落ちかけたクレートは、しなやかな腕と、その奥にあった柔らかな起伏に抱かれていた。そのまま、クレートは重い音を立てて台車に戻される。
その様子をオチルは下から驚いた顔のまま見守る。
「ツェレン……さん?」
床に仰向けになったまま、彼を助けてくれた女神の顔を見てオチルは目を見開く。
以前よりも頬にわずかな血色が戻り、どこか柔らかな光を帯びている。
あの翳りを宿していた面影は、そこにはなかった。
オチルの、胸の奥の何かが不意に跳ねた。
「クレート、なにが入ってるの?ずいぶん重いけど...?」
「あ、はい。す、すみません……」
差し伸べられた彼女の手を掴んで、オチルは慌てて身を起こす。
彼女の温もりが自分のどこかに触れるたびに、触れてはいけないものに触れているような気がしてくすぐったさが全身を走る。
「気をつけてね。」
柔らかな声音にオチルは不意を突かれ、全身がぶるぶると震える。
ぽん、と軽く肩を叩かれたが、オチルはただ頷くことしかできない。
ツェレンは彼の様子に少し困った顔を見せるが、それ以上は何も言わずに歩き去っていった。
腰にかかる髪がふわりと揺れて、背筋の通ったラインに沿ってなめらかに流れていく。
動きに合わせて、彼女の身体の曲線がどこかやわらかく波打ったように見えた。
光の加減のせいか、制服の布地がわずかに艶を帯びていたようにも思える。
思わずその腰の動きに目を引かれたが、すぐに視線を逸らした。
「……」
廊下の先へ急ぐ彼女の後ろ姿を、なんとなく目で追ってしまった。
心の奥がなぜかむず痒かった。
ふと視線を感じて振り返る。
そこには、ドルマーがいた。
少し前まで姉妹のようだった彼女らの間に何かあったのだろうか?
オチルはそんなことを少し考えたが、すぐに首を振った。
彼に何かができるとは到底思えなかった。