Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Union class Dropship Bay
Blumenort System, Zenith
Lyran Commonwealth
1 May 3151
照準器の使い方がわかんない。
前にあたしが乗っていたJennerIICと新しいKitFoxの照準装置は全然違った。
頭に付けるヘルメットすら違う。
壁を隔てた向こうの整備区画から、微かに溶接の火花が散る音がする。金属の焼ける匂いと、重たい油の臭いが遠くから漂ってきて鼻を刺した。
整備の人はみんなここじゃなくて、気圏戦闘機のブロックにいる。あたしのKitFoxのいる格納庫は静かに息を潜めていて、あたしの呟きは床に吸い込まれていった。
あたしにしてはちょっと賢い話をしたつもりだった。
でも、話す相手を間違えてたのは認める。
バヤルはそのミサイルにしがみつくように寄りかかり、興奮で顔を紅潮させていた。
ごついグローブのまま、鋼鉄の先端をバン、バンと叩いていた。ミサイルが入っていたクレートには取扱注意って文字が書かれている。
何を注意したらいいのかは正直わからない。
バイザーを上げて胸と肩の力を抜けって言われた時は、新手のプレイかと思った。
「照準装置はいらない。目を閉じて、呼吸を整えて、戦場を聴く。」
ーー何言ってんだこの人。
「大事なのはリズムだ。」
「リズムって……タイミングの話?」
あたしの戸惑いにバヤルは首を振る。
「違う。“リズム”だ。音楽なんだよ、ミサイルは!ArrowⅣは銅鑼のように鳴らすんだ。」
バァン、とランチャーから覗くミサイルの頭を叩く。振動だけじゃ爆発しないのは分かっているけどやっぱりちょっと怖い。
他のミサイルと違ってArrowⅣは連射ができない。そういう話かな?
「ArrowⅣは……腹で撃つんだよ。丹田と腹に力を込めてトリガーを引く。」
バヤルの指先が遠い天空を指さす。指の先にある格納庫の照明が眩しくて目が眩みそうだった。
「魂を天に放て。矢が届くかどうかは、空が決める。」
ーーねえ、これってさ。ほんとにミサイルの話してる?
口の中に引っかかる笑いと戸惑いを抑えつつ、あたしは周囲を見回した。
助けを求めようにも、近い場所には誰も居なかった。
前に聞いた気圏戦闘機隊の隊長の話は分かりやすかったけど、眠かった。
バヤルの話は何も分からないけど、眠くはなかった。
ーーどっちの方がいいかな?
トリガーを引くときの指の形の話を聞きながら、トヤーは自分でも親指と人差し指で直角を作ってみた。
整備区画の空気は冷えていて、グローブを外した指先は白くて動きがぎこちなかった。
ほんの少し人差し指を高めに持ち上げる。
うん、できた。