※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.05_10

Union class Dropship Cabin D

Blumenort System, Zenith

Lyran Commonwealth

2 May 3151

 

 壁越しに聞こえてくる音は、最初は小さな吐息だった。

 だが、それは徐々に熱を帯び、重なり、くぐもった呻きに変わっていく。

 認めたくなくても、それがツェレンの声であることにすぐに気がついた。

 

──まただ……

 

 耳に届く声を塞ごうとして、枕に顔を埋める。

 士官室の隔壁は薄くない。それでも、ツェレンの喘ぐ声はドルマ―の鼓膜を叩いた。

 吐息のたびに、ツェレンの肌がどれほど敏感に反応しているかがわかってしまう。

 

──どうして、そんなふうに……あんな声、出せるの?

 

 痛みを伴うほど胸が締めつけられる。

 姉のように慕っていたツェレンは、今晩も誰かの腕で溶けている。

 

 思い出すのは、あの人の柔らかな微笑、やわらかな手。悩んでいた時は黙って隣にいてくれた体温。

 そして、苦しみと悲しみに沈んだ顔。

 

 姉の失意と絶望のあまりの深さに、妹分のドルマ―は何もできなかった。

 そして、今夜、ツェレンはよそ者のメック戦士と繋がっている。

 

 喉の奥に塊のような寂しさが滞っている。それを呑み下すように、毛布をぎゅっと抱きしめる。

 姉への感情と体の中心に残る疼きがドルマ―の中でごちゃ混ぜになって、消えてくれない。

 漏れ聞こえるツェレンの声に呼応して、理性の底から湧いてくる。

 

──誰か……誰か……

 

 無力感に負けそうで、心の奥で助けを求めてつぶやいた瞬間、ドルマ―の指はシーツを強く掴んでいた。

 まるで、何かに縋るように。その手が、どこかへ伸びていく。

 指先が、太腿に触れただけで、ひどく敏感に感じる。

 

──姉さん......

 

 音は止まない。それどころか何度目かの快楽が、ツェレンの甘く崩した声が何度も何度も壁越しに響く。

 

 音に打ちのめされて、体が勝手に熱くなる。

 

 感情に羨望と、どうしようもない欲が入り混じる。

 

「……誰か……」

 

 呟いた声は、夜に吸い込まれて消えた。

 

 手を差し伸べない人に手は差し伸べられない。

 姉に手を差し伸べられなかった、彼女に手を差し伸べてくれる人はここにはいなかった。

 この部屋にいるのは自分ひとり。

 かつてのツェレンのように、隣で抱きしめてくれる人はいない。

 

 枕を抱きしめて、何とか涙を堪える。

 悔しさと、情けなさと、誰にも言えない欲望が心を押し潰していく。

 自分のこの惨めさを他人と重ねたところで、慰めにもならない。

 

「……だれか……」

 

 それでも、そう、また小さく呟く。

 自分を抱きしめてくれる、ぬくもりだけを求めて。

 壁の向こうでは、なおも快楽の音が続いている。

 心の痛みと熱と、満たされない渇きに身を焦がしながら。

 音に晒されながら、ドルマーはただ、ひとりで体を丸めていた。

 

「ドルマー……」

 

 不意に聞こえたその声に、身体がぴくりと反応する。

 何も言わず、ただ目を見開いて、暗がりに浮かぶ真夜中の侵入者の姿を瞳に写す。

 下着だけの姿のアリマ。

 その表情に、ドルマ―の胸が微かに疼いた。

 

──この子も、私と同じように?

 

 どこか浮いた表情のアリマがゆっくりとドルマ―の隣に腰を下ろす。

 アリマは腕を伸ばすと、ドルマ―の頬に指を添え、そのままそっと唇を寄せた。

 彼女がそれを拒まないことを確かめてから、今度は深く、熱を孕ませてもう一度。

 ドルマーは微かに息を呑み、目を閉じた。

 震えた指がアリマの服の裾に触れ、掴むようにしてしがみつく。

 アリマがドルマの胸元の布を指で押し広げ、うっすらと汗ばんだ肌を露わにした。

 ゆっくりとその胸に口づける。

 湿った音が響き、ドルマ―の背が跳ねる。彼女の先端はすでにわずかに硬さを帯びていて、アリマの唇で吸われ、舌で転がされるたびに、身体が熱に浮かされていく。

 声にならない喘ぎが、喉の奥から漏れた。アリマはその声を味わうように、右手を下へと滑らせる。

 ドルマ―の下着の縁をなぞり、そこがすでにじっとりと濡れていることを確かめた。布越しに指を滑らせ、円を描くように撫でられるたびに、足が竦み、腰が引ける。

 だが、逃げられない。

 アリマの指がゆっくりと布をずらす。指が直接、濡れたそこへ触れた瞬間、ドルマーは喉を詰まらせるようにして息を呑んだ。

 熱く、柔らかく、蕩けるような感触。アリマはその感触に舌先で唇を湿らせ、指をゆっくりと押し入れる。

 最初は浅く、撫でるように。やがて、じっくりと深く。ドルマーの体が再び跳ねた。

 唇が苦しげに歪み、息が漏れる。肩が強ばるたび、アリマは胸に吸い付き、指の動きを変えた。

 濡れた音が次第に部屋に広がり、甘い匂いが空気を包んだ。

 腰が勝手に動く。

 はじめは戸惑いだったが、次第に身体が自然と快楽を求めて前へと動き始めた。

 

 アリマは言葉を発さない。

 慰めも、甘やかしの一言も口にしなかった。

 ただ、目を細め、指先と唇でドルマーのすべてを貪る。

 もう一方の手で、再びドルマ―の双丘を包み、先端を擦る。

 吸いながら、指で弾きながら、奥のうねりを感じ取っていく。

 ドルマーの呼吸は荒く、汗に濡れた身体がベッドの上で揺れた。

 アリマの指がどこかに触れるたびに、痙攣のような波が走る。

 そして、

 

「っ……あっ、んっ……ぁ……!」

 

 声が、割れた。震える吐息が喉から漏れ、全身を硬直させてドルマーは、果てた。

 アリマはその様子をじっと見つめながら、指をゆっくりと抜いてみせた。

 濡れた指先を自分の口元に持ち上げ、何も言わずに舐め取る。

 ドルマーは何かを言おうとしたが、喉からは言葉が出てこなかった。

 ただ熱と快楽の余韻に沈みながら、瞳を潤ませ、アリマを見つめ返す。

 アリマはようやく唇を開いた。

 だが、吐き出されたのはたった一言、

 

「足らないわね。」

 

 それだけだった。

 そして、再びアリマがドルマ―の唇を奪う。舌が絡み、指が再び脚の間に触れる。

 その熱に身を委ねながらも、ドルマ―の胸の奥に、ひとつの確信があった。

 アリマは、ドルマ―のためにここにいるのではなかった。

 

 そこに空虚を抱えながらも、ドルマ―はアリマの指に自分の全てを委ねた。

 次の波は、もっと深く、もっと濃く、彼女たちを飲み込んでいく。

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