※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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曙光
Ep.06_01


DropPort Pad 5

Esteros System,Bern

Jade Falcon

20 June 3151

 

「そのまま降ろしてちょうだい。」

 

 降下船から降ろされる兵器や弾薬の詰まったクレートで、降着パッドは埋まっていた。

 アリマはパッドを右へ左へと忙しなく駆け回り、アレフの操作するクレーンを先導する。

 

 さすが元本職なだけあって、彼の荷下ろしの手際は良かった。

 熟練の重機操縦士はどこの集団でも貴重な戦力だ。アレフは腕も良いが眼も良かった。

 

――大事な社員をドルジに奪われたあの会社は今ごろ、アレフがいなくなった穴を、数人がかりで埋めているんでしょうね。

 

 どこかで誰かが困っていても、それはアリマには関係ない。

 アリマが余計なことに想像を巡らしていると、降着パッドの入り口の方が何やら騒がしくなった。

 どうやら厄介ごとだ。

 

 だらしのない風体の男たちがドカドカとパッドに踏み込んでくる。

 ボディアーマーの上に、油と血の染みついたコートを羽織り、銃を無造作に下げていた。

 どの顔も清潔感とは程遠く、足元の靴も磨かれていなかった。

 

――ウチのギャング様はずいぶんと紳士だったのね。

 

 どこかで何かをしているドルジのことを思い浮かべる。

 人攫いでも何でもするけど、彼は少なくとも目の前のどれよりも清潔だった。

 

 地元のギャングなんて、どうせ大したタマじゃない。

 相手をするのも面倒な相手だけれど、よりにもよって彼らに一番近い位置にいるのはアリマだった。

 

「なあ嬢ちゃん、ここの船長はいるか?」

 

 オジサン達は駐車料金が欲しいのさ。と言って下品に嗤った。

 アリマは普通に見れば十代半ばの少女に見えるはずだ。そう見えるように造っているし、そういう服を選んで着ている。

 一人や二人なら握りつぶしてあげるのだけど、ちょっと今回は人数が多かった。

 

 周囲の宇宙港の職員たちが静かに持ち場を離れていく。

 彼らの気配が遠くなっていくのを感じながらアリマはじっと男たちを見上げた。

 やがて、話す相手を間違えたことに気がついたチンピラが彼女への興味をなくしていく。

 

「降下料って知ってるか?この土地を使うんなら、ちっとは義理を通してもらわねぇとな。」

 

 男はアリマから大人の居場所を聞き出そうとしている。

 

――さて、どうしようか。

 

 アリマが口を開こうとすると、アリマ達を背の高い影が覆った。

 「おおぉう、兄さんこの船の人間か?」

 

 チンピラが目を丸くして影を見上げる。ああもう、嫌な予感しかしない。

 

――どうして、そこで銃に手をかけるのよ……。

 

 どすん、と嫌な音を立てて、チンピラの体が横っ飛びに吹き飛んだ。

 

 この野郎!と異常に気づいた他のチンピラたちが銃を抜き、撃たれる一方の銃撃戦が始まった。

 最初は銃を抜いたチンピラたちが押しているように見えたが、すぐにコンテナの中で遊んでいたバヤルが乱入したことで、状況は一変した。

 両手に構えたバーナーが燃料と炎を巻き散らかしている。

 それに追い立てられたチンピラを待ち構えていたドルジが、ひとりまたひとりと殴り飛ばしていく。

 

 床に落ちた銃を拾い上げて、片手でトンッと衝撃を加えて分解する。

 この程度の銃ならば、アリマは片手でも分解できた。彼女が不能にした銃の数だけ、ドルジとバヤルの危険が減る。

 チンピラたちの銃の乱れ撃ちは、弾が床やコンテナを跳ね、破片がアリマをかすめた。

 身を寄せているコンテナの品目表示に「焼夷弾頭」という単語が見える。

 バヤルの声が真上から響いた。

 

「ウェールーダン!ウェールーダンッ!!焦げ付き注意っ!!」

 

 両手のバーナーから無軌道に炎を噴き上げている。このまま中にまで火が通ったら、コンテナはまるで巨大なロケット花火になるだろう。

 

――焼き加減の話をしてる場合じゃないでしょ。

 

 すぐ真下にいる味方も巻きかねないその荒々しさとふとした気づきに、アリマは背筋を冷やす。

 隣で火気厳禁の張り紙が寂しそうにしている。

 

――心配しないで、私も寂しいわ。

 

 でも、アリマは彼を守れない。自分まで炙られるのはごめんだった。

 張り紙をひと撫でして、別れを告げると熱で赤く染まり始めたコンテナから体を離して走る。

 ヘッドセットを両手で押さえながら走る。

 

――ここは民間の宇宙港よ?

 

 アレフとトヤーがメックに乗った。イヤパッドの向こうで2機のメックのシステム音声が火器管制装置に火が入ったことを告げている。

 メックで脅しをかけるだけじゃない。ドルジは撃たせる気だ。

 バーナーの近くも危なくて嫌だけど、対人用の火炎放射器の近くで白兵戦とか絶対無理。

 

 一度、このパッドから離れよう。

 アリマは炎を避けてコンテナの間に滑り込む。左手のコンテナの向こうからは銃撃音、右手には「冷却材」と書かれたコンテナ。

 その間を足早に抜けて、その先、降下船のパッドの出入り口へ向かおうとした。しかし、そこにも新手の影が大勢立ちはだかっていた。

 総崩れになったギャングたちと、新手のギャングたちの間にアリマは挟まれていた。

 

――噓でしょう?

 

 運命のあまりの意地悪に、涙が込み上げてくる。

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