※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.06_02

DropPort Pad 5

Esteros System,Bern

Jade Falcon

20 June 3151

 

「やめろ、やめろ。双方、武器を下ろせ!」

 パッドの入り口から現れた男が、銃声に負けぬ怒声を響かせた。

 

 一瞬の静寂。

 その隙を逃さず、アリマはコンテナの陰に身を滑り込ませた。まずは、この場をしのいだ。

 

 チンピラたちのざわめきに耳を澄ませば、新手はエステロスのどこかの軍閥の兵士らしい。

 声をあげて銃撃戦を止めたのが「アリンダム少佐」。年季の入った現場主義のオジサマだ。

 彼の一喝で、兵隊ギャング達も一応は銃を下ろしつつある。

 

――ギャングの少佐が出て来たところで結局、彼も駐車料金目当てなら、この戦争は終わらないんだけど?

 

 アリマは顔を上げた。

 エステロスではもう十年以上、軍閥同士の内戦が続いている。どの勢力も星系全体を支配できるほどの規模ではなく、惑星各地で抗争が燻り続けていた。

 内戦が長引く理由の一つは、星系内での兵器供給の貧弱さ。この星では、メックも気圏戦闘機も造れない。工業用メックに大砲を載せて撃ち合い歩兵の数で押すような、前時代の戦争をまだやっている。

 パッドの入り口に並んだ一隊は、整然とした列をなしている。さっきまで銃を構えていたチンピラ達とは違う。よく見れば、装備は粗末だが統一されている。生身で工業用メックと戦うために訓練された兵隊だった。

 そして、その中を進むアリンダム少佐の姿。羽織ったコートは泥にまみれ、色も褪せている。それでも背筋は伸び、顔には戦場を渡り歩いた者にだけ刻まれる疲労の色が見て取れた。

 

「道をあけろ」

 

 短く命じた声に、チンピラたちは反射的に後ずさり、蜘蛛の子を散らすように道を開ける。

 

 アリマも警戒を強める。

 銃声は止んだが、状況が悪いのは変わらない。むしろ、今度はもっと面倒な相手が来た。

 

 パッド中央へと進む少佐の前に、緑の戦闘服を着た男が現れ、無言のまま進路を塞ぐ。

 

――少佐はドルジを知っている。

 

 少佐の表情が微かに強張ったのを、アリマは見逃さなかった。どこかの過去の戦場で、したことがあるのだろう。忌まわしい記憶がよみがえったときの顔だった。

 少佐は足を止め、静かにその場に膝をついた。

 階級章のついた肩が沈み、拳が床を叩く。

 

「申し訳ありませんでしたッ!!」

 

 地面に頭を垂れた男の声に広場に一瞬、静寂が訪れる。ドルジは無言のまま、地面に頭を垂れた少佐を見下ろしていた。

 

「……うちのバカどもが、無礼を働きました。どうか、怒りを鎮めていただきたい。」

 

 少佐の命乞いのような謝罪に場が少し騒つく。何人かのチンピラ達は安堵の表情を浮かべていた。

 動き出しているのはメックだけじゃなかった。

 上の階の作業用通路では、航空隊の男2人が大型の狙撃銃を構えていた。

「どうか、エステロスでの滞在を快適にお過ごしください。必要であれば、宿舎や資材の手配も我々がッ」

 少佐の過剰なまでの謝罪に、アリマはようやく息ができるような気がした。

 

――どんだけ負けたのよ?

 

 一度や二度の負けでここまで怯えることはない。

 星の内戦が続く中でも、かつての支配者に対する恐怖は未だに彼らの中で生きているのだ。

 

 厄介ごとに巻き込まれるのはこれからのような気もする。

 しかし一先ず、この宇宙港は火の海にはならなかった。アリマはそれだけでよしとした。

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